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ゆけゆけ二度目の処女

監督: 若松孝二 

1969年

製作: 若松プロダクション
企画・製作: 若松孝二
脚本: 出口出(足立正生, 小水一男)
詩: 中村義則
撮影: 伊東英男
音楽: 迷宮世界
照明: 磯貝一
編集: 具流勘助
助監督: 小水一男
出演: 秋山未痴汚(未知汚・道男), 小桜ミミ, オバケ, 善兵世志男, 青木幽児, 風雅超邪丸, マルセル・カキ, 加上玲, 花村亜流芽, マダム・エドワルド, 保根桂和


★★★★モノとしての硬質な詩情

American Dinematheque presents というシリーズから "Go, Go Second Time Virgin" のタイトルでリリースされている米盤。リージョンフリー。画質きわめて良好。ただし英語字幕が消せない。
映像特典としてクリスチャン・ストームズが監督した、約50分におよぶ "Interview With Director Koji Wakamatsu" が収録されている。若松孝二が自分の生い立ち、映画作りの姿勢、主要作品にまつわるエピソードを、バーのカウンターでグラス片手に語りまくる充実したドキュメンタリーなのだけれど、(おそらくインタビュアーも務めているストームズによる)同時通訳ふうの英語音声が被さって、若松本人の声が断片程度しか聞きとれないので困った。

事務所のあるビルの屋上を舞台にして、一本の映画を撮れないかと思いついた若松孝二が、足立正生に脚本を依頼した作品だそうで、回想のシークエンスで一度きり、海辺のロケシーンがあるものの、あとはビルの屋上と階段、ビル内の一室、屋上から見た街並みしか映らない。そんな究極の経費節減アイディアから、これほどキレまくった作品が作られたことに、当時の若松プロの勢いを思い知らされる。

不良グループからビルの屋上で輪姦された少女(小桜ミミ)と、それを傍観していたビルの管理人の息子(秋山未痴汚*1 )の不可思議な愛を描く物語。
少女は母親が強姦されて生まれた子供。輪姦されても生の悲しみが消えないと、中村義則の詩*2 を口ずさみながら、少年に殺してほしいと迫る。少年はすこし前に、同じビルの一室で酒と淫楽にふける大人たちからいたずらされ、彼ら四人を包丁で刺殺してきたところだった。
やがて夜になると、少女を輪姦した不良四人と、彼らに連れられた三人の女の子が屋上にやってくる。ふたたび少女を犯しはじめた不良の一人を、少年は突然刺し殺し、逃げまどう他の不良グループを追いつめていく……。

残酷な内容を扱いながら、詩的なイメージにあふれた作品。
強姦されて朝を迎えた屋上で、少女が給水塔からこぼれる水(?)のシャワーで体を清める姿を、美しい逆光でとらえたシーンの強烈なすがすがしさ。まぶしい日差しに目を細めながら、ふたりが並んで横たわっていると、突然凶暴な夕立に襲われて、なにか狂躁に取り憑かれたようにはしゃぎながら駆け出すのだけれど、そこですべてから切り離されて、生と死の境界に立ちつくす少年と少女が、まったくかみ合わない会話で心を通じさせる奇跡が起こるのは、当然のことだと思われる。

少年が大人たちを惨殺する場面はパートカラーになって、毒々しく赤い血が噴出するのだが、その舞台になる部屋になにもセットらしきものがないという低予算映画のあり方そのものが、淫行や殺人を抽象化している。
普通ならば叙情的な気分を呼びさますために使われる詩や歌*3 にしても、あまりにもそれらが直接的な意図を持たずに口ずさまれるために、まるで「普通」の映画の画面に偶然とらえられた印象的な風景や人物のように、モノとしての硬質な詩情をたたえているかのようで、それはこの映画のすべての事物にもあてはまる。

それだけならよくできた不条理劇や詩劇と呼ばれるだけだったろうこの作品は、いっぽうで映画らしい活劇性にも充ちていて、それが屋上から地下室まで階段を駆け下りる、長い主観ショットであったり、屋上と給水塔の上に人物を配したり、給水塔の上から屋上を、あるいは屋上からはるか下の路面を見下ろしたりといった鋭い構図感覚だったり、限られたロケーションを最大限に使う経済性と劇的な効果がみごとに一致して、一切の無駄がない。
少年が最初に不良グループを刺した瞬間、半裸で横たわる少女を中心に、不良たちが輪になってへたばる光景を俯瞰したショットが挿入される。このあっけにとられるキレのよさに、どんなものでもむりやり「映画」にしてしまう、演出力の凄みを感じた。


*1 丸縁メガネを血で曇らせながら怪演する主演の秋山未痴汚って、80年代に盛んにメディアに露出していたのをなんとなく覚えている秋山道男(ここにプロフィールあり)なんですね。おどろいた。

*2 ゆけゆけ二度目の処女 男が選んだ最高傑作 ゆけゆけ二度目の処女 遠回りでも明るい歩道を ゆけゆけ二度目の処女 愛の喜び恋のニトログリセリンよ…… ゆけゆけ二度目の処女 あなたのマラソン長引かせる 長引かせることのない空の部屋 鶏ガラのように立ち上がる 近親相姦の台所 あなたの大きな下腹部 あなたの自転車…… ゆけゆけ二度目の処女 あなたの大きな手のひらに 黄色の夢となって乗りたい 処女の泉のほうへ 窓から窓から落ちてきた鳥を……(採録)
中村義則ブログ
中村義則集

*3 劇中で少年が自分で作ったのだという歌は、大和屋竺が作詞したものだそうで、秋山道男が歌わない部分は、大和屋自身が歌っているらしい(特典インタビューより)。


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