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性賊 セックスジャック <いろはにほへと>

監督: 若松孝二

1970年

製作: 若松プロダクション 
企画・製作: 若松孝二
助監督: 小水一男
脚本: 出口出(足立正生)
撮影: 伊東英男
音楽: 音楽集団映像グループ
照明: 磯貝一
編集: 中村源喜
出演: 香取環, 加賀美妙子, 若山悦子, 笹原茂朱, 須藤黙布, 山川蜜, 天野照子, 多田改造, 今野勇, 斉藤正治, 瓜生良介, 三好道明, 巻口徹, 寺島幹夫, タンコボ鬼馬二, 小水一男, 秋山未知汚(未痴汚・道男)


★★★ドン詰まりから立ち上がるもの

 <いろはにほへと>
   セックスジャック

というのが、冒頭に出るタイトルクレジット。
「政治の季節」が収束に向かう時代の停滞感はますます濃厚になり、学生運動家たちはなにひとつ行動に移せないまま、手当たりしだいシンパの女の子を押し倒し、バラ色の連帯と称するセックスにふけるだけ。メンバーの前では激烈なアジを飛ばすリーダー(小水一男)も、逮捕されたとたんに寝返って、平然と仲間を売り飛ばすていたらく。戯画化されている、というわけでもなくて、実際の状況もこれと大差なかったのではと想像されるドン詰まりムードが、なんとも息苦しい。
疑心暗鬼と乱交が空転する日々を送る彼らを尻目に、世間ではどこのセクトの仕業でもない交番襲撃や爆破テロ、ついには首相暗殺に至る過激な直接行動が、淡々と実行されていく……。

個的な爆弾闘争への転換を示唆した『現代好色伝 テロルの季節』の焼き直し、といえなくもないが、見方によって傑作とも退屈なだけとも受け取られるだろう『テロルの季節』に比べると、こちらはかなり立体的な作劇がなされている。
現在でもカルト宗教の内部で繰り返されているような、閉塞的な極限状況下での人間の典型的な愚行だとか、秋山未知汚が演じるノンポリ青年の、不気味な存在感が見え隠れするフーダニット的サスペンスだとか、刑事(寺島幹夫、タンコボ鬼馬二)に踏み込まれたアジトからの逃走や、仲間同士の泥だらけの殴り合い、警官との銃撃戦などのアクションシーンだとか、ゲスな興味で見ているぶんには、楽しみも多い。
額に銃弾を撃ち込まれたはずなのになかなか息絶えない、小水ガイラの断末魔も壮絶です。

停滞期の学生運動家、というと、生身の人間を思い浮かべてしまう自分としては、フィクションとしての距離感が中途半端に取りにくい作品で、自分たちは いろはにほへと の いろは もなしえないのだというアジトでの自虐的な生活描写が心苦しくてならなかったのだし、秋山未知汚の特異な役柄も、『ゆけゆけ二度目の処女』の異常性を超えたとも思えず、次の標的は天皇あるのみ、という幕切れの暗示に今さら戦慄する、というわけでもなかった。

(2005/7/25 ポレポレ東中野 若松孝二レトロスペクティブ2005)


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