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日本映画(監督別)>中川信夫>人形佐七捕物帖 妖艶六死美人

人形佐七捕物帖 妖艶六死美人

監督: 中川信夫

1956年


★★★かっちり撮った娯楽映画

渡辺宙明(みちあき)のあやしいオープニング音楽。これが映画音楽デビュー(中川信夫監督特集トークショー)。
人形佐七は横溝正史が、GHQの統制下で殺人物語を書けなくなった苦し紛れに手がけた捕り物シリーズで、雰囲気優先の軽い読み物だから、この映画を見ながらマジメに「推理」をしようとすると、結末の伝奇ロマンめいた展開がアホらしくなる。草双紙趣味、とでもいうんでしょうか(鏡花の「薬草取」が元ネタっぽい)。しかしそもそも、犯人は、なんでそこまでして美女六歌仙を殺すんだか……。
中川作品らしく、いいかげんなところはないのだが、立派なセットと、ちょっと凝ったところを見せる移動シーン以外は、かっちりと撮った娯楽映画といった印象だ。

お目当ての「六死美人」は、美船洋子、山下明子、阿部寿美子、三原葉子、三重明子、若杉嘉津子という女優たちで、佐七の女房が日比野恵子、ヒロインが宇治みさ子という人たち。「六死美人」のなかで、若杉だけはちょっと特別な役で、しかも殺されないのだから、じつはタイトルはウソである。
若杉は、ちょっと変わった色気がある女優だなと思うものの地味で、その美貌と存在感が花開くのは、次に中川監督と組んだ「怪談累が渕」からだ。

佐七を演じる若山富三郎は、ぼくなんかは顔を見ただけではすぐにわからないほど若いが、声はそのまんま。型どおりの動きに加えて、敵の手強さに、いちいち、ウグッ、とひるむところまでやってる殺陣は、見ていて引き込まれる。しかも若山=佐七シリーズ第一作にして、いきなり最大級のピンチに追い込まれてしまう。
殺陣で人を斬るときに、ズバッという効果音をつけるのは、61年の「用心棒」に始まったことだというし、この映画にももちろん、効果音はついていないのだけれど、天知茂の殺陣には、音もなく斬った相手が倒れるのが似合っている。天知が演じるのは、いつもどおりニヒルな浪人もので、悪いヤツかと思いきや……。
六歌仙を妾にしているお大尽を演じる市川小太夫は、最後には「碇知盛」までやっちゃって、泥臭い大芝居になるだが、こうでもしないとやってられないような役なんだな、これが。
佐七の子分たちの掛け合い漫才のノリや、幇間を演じる役者(あるいは本物)の芸が、今では見られないおもしろさ。

地方で繰り返し上演されたものしか残っていなかったのか、この製作年にしてはフィルムの状態がきわめて悪く、音声も聞き取りづらい。


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