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蝶々・雄二の夫婦善哉

監督: マキノ雅弘 

1965年

原案: ミヤコ蝶々
脚本: 依田義賢
企画: 俊藤浩滋, 秋元隆夫
撮影: 鈴木重平
音楽: 八木正生
出演: ミヤコ蝶々, 南都雄二, 丘さとみ, 中村芳子, 山乃美七子, 田中春男, 笠置シヅ子, 藤山寛美, 小島慶四郎, 中田ダイマル, 中田ラケット, 正司花江, 正司歌江, 正司照江, 堺駿二, 岡八郎, 柳家金語楼, 白木みのる


★★☆「懐かしの……」というやつです

織田作の話でもやるのかなと思っていたら、いきなりテレビの「夫婦善哉」が始まってびっくりしました。
しかも、ゲストの夫婦はミヤコ蝶々と南都雄二自身で、司会の蝶々・雄二が、わてらにほんまそっくりでんなあ、とかとぼけながら、番組が進行する。
この番組(TV放送1963〜1975)は、家族が毎週観ていたのでぼんやりと覚えていますが、さすがに小さい子供には、夫婦の機微とかいわれてもよくわからなかったのです。

以下、結末までのネタバレあらすじ。


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ミヤコ蝶々と南都雄二は、大阪ミナミで「白玉ぜんざい」を営む夫婦。
テレビ出演で人気が出たのに、夫の南都はカミサンの尻に敷かれる生活でクサっている。
というのも妻のミヤコは、板前時代の主人の娘で、養子入りの肩身の狭さに加えて、呑む・打つ・買うの悪癖をガッチリ押さえられているからで、それでも隙をみては、女に手を出す毎日。

そんな南都が出会ったのは、洋食店をやりたいという酒場の女、丘さとみで、料理学校に通い始める彼女に接近するために、彼もまた学校通いをはじめるのだけれど、それを見たミヤコは、夫がやる気を出したのだと思い、ぜんざい屋を洋食店に改装する決意をする。
しかしある日、ミヤコは、子連れの丘と夫婦然とくつろぐ南都の姿を目撃。

夫を追い出して、自分は知人の料亭で仲居になって働くのだが、そこへ偶然、新任の板前として、南都がやってくる。
案の定、南都は、丘から甲斐性のなさに愛想を尽かされながらもズルズルと関係を続け、金に困ってふたたび包丁を握ることになったのだった。

まだ夫婦でありながら、他人を装って同じ職場で働くふたりの微妙な雰囲気を感じて、事情を知らない主人夫婦(田中春男、笠置シヅ子)はふたりの仲を取り持とうとする。
焼けぼっくいに火がついて、元の鞘に収まるかと思った矢先、南都が丘との間に子供ができたのだと告白。
ミヤコはきっぱりと復縁を諦めて丘に離婚届を渡し、「白玉ぜんざい」の店跡で洋食店を開業して、南都・丘夫婦をコックとして雇う。
知人が詰めかけて賑わったオープンの夜に、夫婦を見送りながら、ミヤコは独り悄然とするのだった。

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ウィキペディアの記事を読みながら、ミヤコ蝶々のことやらテレビ番組のことやらを思い出して、南都雄二の芸名は、台本に書いてある字が読めなくて「なんという字?」と聞いてばかりいたのが由来だと信じていたのが俗説だと書いてあるのが可笑しかったり。
それにしても、ここまで私生活を売り物にして人気を集め、しかもこんな生々しい夫の浮気映画を自身で企画して、出演までしていた芸人がいたというのは、驚きです。

マキノの演出は中庸を保って、次々と登場する関西芸人たちの個性を引き出すのに徹しているのだが、夫婦の劇的な場面で細かいショットを重ねるところなんかは、さすがにツボを心得ています。
中田ダイマルの料理学校講師のボケた発言を、後ろに従ったかしまし娘がいちいち復唱したり、藤山寛美と小島慶四郎の板前コンビが、先輩風を吹かしながら南都にあしらわれてしまったり、改装業者の堺駿二と岡八郎が、やたらと工学博士設計を自慢したり、ミヤコ蝶々に言い寄る柳家金語楼が、無類の好々爺ぶりを見せたり、騒動のなかで田中春男と笠置シヅ子の見てるだけで可笑しくなる顔が覗いていたり、高齢者の多い客席は大受けで、自分もそういえばと、当時のテレビ番組を思い出して、懐かしいのなんの。

ミヤコ蝶々が買い物に入った洋品店で、どこからか奇妙な甲高い声が聞こえて、いったいどこからと店のなかを見渡すと、低い位置に白木みのるが立っている、という(当時おなじみの)ギャグには大爆笑。
とはいっても、全体はコテコテという感じではなくて、淡泊なくらいにサラッとテンポよく物語が進むので、気持ちがいいんです。

辛いラストには、えっ? と思いながらも、まあ実際の蝶々・雄二がそうなんだから仕方ないと納得するわけで、当時のテレビ番組や芸能界実話があってこその映画。
それでも、ミヤコが南都・丘を見送る小雨の降る商店街の突き当たりに、ちゃっかり「日本侠客伝 監督 マキノ雅弘」なんていう看板が掛かっていたりして、品のいい遊び心を忘れない映画なのでした。


(2008/02/29 東京国立近代美術館フィルムセンター 生誕百年 映画監督 マキノ雅弘(2) 2008/04/04記)


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