★★★
次郎長ものの原型
たった25分の断片だけど、傑作の臭いプンプン(初公開時は約67分)。
久保為義(くぼためよし)とマキノが演出をどう分担したのかはわかりません。
「ロシアのゴスフィルモフォンドで発掘され、2004年にフィルムセンターに収蔵された」のだそうで、発見時の保管状態がよかったのか、かなり綺麗な映像と音声です。
残っているところは、東宝版ストーリーでいえば『次郎長三国志 第二部 次郎長初旅』(1953)で、兄弟分の堺左千夫の料理屋に宿を取った次郎長一家が、堺の博奕癖のおかげで着物を失うところなのかな。
でも、この作品で次郎長一家が泊まるのは、料理屋ではなくて『次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家』(1953)で、捕方に追われた次郎長一家がかくまわれる七五郎のボロ家にそっくり(ぼくはこちらの元ネタだと勘違いして、なぜお蝶がいないのだろうと思いながら観ていました)。
リメイクで、過去作品を効率的に使い回すマキノ流創作法の一端がうかがえます。
博奕好きの兄弟分役の役の男(水原洋一という人)がおもしろい。
次郎長一家が宿代代わりに押しつけたなけなしの金を、この男が博打で全部すってしまうシークエンスが絶品です。
土塀の長く伸びた道の向こうから、男が意気揚々と向こうからやってきて、低い位置にフィックスされたカメラを追い越していくんだけど、すぐにトボトボ引き返してきて、その後ろ姿をずっと撮っている。それだけなんですが、それだけで、何時間かの時間が経過して、博打に負けたんだなとわかってしまう。
香港映画には、カメラを止めてカットつなぎをしてしまうカメラ内編集という早撮り技法があったそうなんですが、これはそれを越えた無編集編集、とでもいうべき高等技法ですね。
庭先で貧乏夫婦が金の算段をする叙情的な美しい場面とか、博打に負けた男が、さらなる元手を求めて、寝ている次郎長一家の衣服と長刀を盗む愉快なサスペンスとか、抜群におもしろくて、この断片だけでも傑作ぶりがわかります。
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この日は続けて『ごろんぼ街』 (1936)(不完全・66分)という作品を鑑賞。
えーと、マキノの姉の輝子の夫の澤村國太郎が主演。マキノはアンクレジットで、根岸洋一郎という人との共同監督。
フィルム状態が悪くて、セリフが聞き取りにくくて、ブツブツ話が飛んで、わかんないなーと思っているうちに、寝てしまいました。
(2008/02/19 東京国立近代美術館フィルムセンター 生誕百年 映画監督 マキノ雅弘(2) 2008/05/08記)