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帰ってきた モニターの中の映画館

日本映画(監督別)>マキノ正博/マキノ雅弘>江戸の惡太郎

江戸の惡太郎

監督: マキノ正博 

1939年

原作・脚本: 比佐芳武
撮影: 石本秀雄
音楽: 西梧郎
出演: 嵐寛寿郎, 轟夕起子, 市川小文治, 瀬川路三郎, 香川良介, 志村喬, 田村邦男, 原健作, 團徳麿, 星玲子


★★☆肝心のラストシーンが欠落

1959年にも東映でリメイクされた作品。

雪深い北陸の豪商の家から、親に押しつけられた結婚を嫌って、花嫁が脱走。
雪の夜道を走る花嫁、きらめく松明を持って彼女を捜す村人たち……という画がロマンチックです。

この花嫁、轟夕起子(雅弘と結婚する1年前の撮影だったそうです)が、男装をして十四才の男児だと偽り、長屋で寺子屋を開いているアラカンの家に転がり込む。
愉快な長屋の人々と、楽しい日々を送るのだけれど、道満という教祖がはじめた新興宗教団体が、長屋の人々を追い出して、教壇の本拠地を建設しようとする。インチキ教祖は買収した土地を買い戻す金を要求する。
轟夕起子は、自分が正体を明かして家に戻れば、金を算段できる。でも、大好きなアラカンと一緒の生活を失いたくない、と苦悶するのです。

道満は、娘の探索するために江戸へやってきた轟夕起子の曾祖父・祖父・父の三人組を騙して、大金をせしめようとする。さらに長屋の未亡人を騙して辱め、自殺に追いやってしまう。
男アラカンの辛抱が爆発。単身道満の屋敷に殴り込むのだった……。

うーん。
男装の麗人と、長屋ものと、新興宗教と、という取り合わせは新鮮なんですけど。
轟夕起子が十四才の少年とは、どう見ても誰も騙されないだろうという時点で、話に真実みがなくなってしまう。
マキノ得意の長屋の描写もやや類型的で、丁寧な仕事とは言いがたい。
子供相手の先生ばっかりしているアラカンの強さが、あらかじめ描かれていないので、殴り込みも無謀に思えるし……。

そもそもこの作品、ノイズと欠損が多くて、肝心なセリフが聞き取れず、展開がよくわからないんです。
ラストに花嫁衣装を着た轟夕起子が、アラカンの長屋をあらためて訪ねる場面があって、轟が顔を見せたとたんにプツンとフィルムが切れて、「終」が出てくる。
それまで汚い子供の衣装ばっかり着ていた轟夕起子の、唯一の見せ場だというのに。
きっと綺麗なシーンのコマを、上映館の人だかがごっそり抜き取ってしまったんでしょう。

上映が終わったあとで、労務者ふうのおじさんから、少々お訊ねします、最後は轟夕起子がアラカンと結婚したということなんでしょうか、と質問されました。なぜぼくにそんなこと聞くのかわかりませんが、でもそれくらい、よくわからないんです。


(2008/02/21 東京国立近代美術館フィルムセンター 生誕百年 映画監督 マキノ雅弘(2) 2008/04/06記)


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