帰ってきた モニターの中の映画館

日本映画(監督別)>マキノ正博/マキノ雅弘>忠治活殺剱

忠治活殺剱

監督: マキノ正博 

1936年

製作: マキノトーキー製作所
原作: 伊藤大輔
脚本: 比佐芳武
撮影: 大森伊八
録音: マキノ正博
出演: 清水英太朗, 大内弘, 原駒子, 大倉千代, 大久保清子, 葉山純之輔, 光岡龍三郎, 浅野進二郎, 大倉文男, 島津勝二


★★☆伊藤大輔の『忠治旅日記』を補完できる

公開時の75分のうち、59分のみ現存。
前作の『國定忠治 信州子守唄』で忠治を演じた月形龍之介が都合で出演できず、清水英太朗という人が演じています。

これは伊藤大輔の『忠治旅日記』(1927)でいうと『御用篇』にあたる。
逃亡中の忠治が堅気の商人になりすまして、そこのお嬢さんが忠治に恋をするところ。続いて忠治が、身売りをした娘を助けるために、危険を顧みずに正体を明かして、土地のやくざの組に乗り込むところ。

伊藤版では、忠治がいきなり商家の店先に座ってるんですが、本作ではそれに至るまでのいきさつが、かなり残っている。なんと、『忠治旅日記』の欠落ヶ所を補完してくれる作品でもあるんです。

一緒に連れ歩いていた子供と忠治が涙の別れをする叙情場面に続いて、土地のしがない十手持ちに物語の視点が移動する。
幼い子供を抱えて生活に苦労している十手持ちが、忠治を捕まえて、賞金の50両をなんとか手に入れたいと思いながら、ふらりと立ち寄った酒屋の店番をしているのが、商人になりすました忠治だった……という趣向。

『忠治旅日記』で印象的だった、忠治と酒屋のお嬢さんのラブシーンの、大きな酒樽が並んでいるセットもそのまんまなんだけど、伊藤版の狂気はなくて、マキノ演出は朗らかで楽しい。

ただし、新たに発見されたトーキー部分と、既存の弁士用サイレントフィルムをつないでまとめているので、急に画質が悪くなり、音声がなくなるので、落ち着いて観られません。
ラストにくっついた、捕り方に捕らえられた忠治を子分たちが救出する乱闘シーンの断片は、画質も悪く無音。
ここで、忠治のために駆けつけた原駒子が、ピストルを使う場面があって、緋牡丹お竜のはるかな原型がある。


(2008/02/19 東京国立近代美術館フィルムセンター 生誕百年 映画監督 マキノ雅弘(2) 2008/04/26記)


< 目次に戻る

Google