帰ってきた モニターの中の映画館

日本映画(監督別)>マキノ正博/マキノ雅弘>牡丹と竜

牡丹と竜

監督: マキノ雅弘 

1970年

製作: 日活
企画: 水の江滝子, 雲島幸夫
脚本: 遠藤三郎, 山上次郎
原案: 入山次郎
撮影: 横山実, 北泉成
音楽: 小杉太一郎
主題歌: 高橋英樹, 小林旭「牡丹と竜」
助監督: 遠藤三郎
出演: 高橋英樹, 和泉雅子, 田崎潤, 安部徹, 水島道太郎, 小杉勇, 小林旭, 高橋明


★★巧妙なやっつけ仕事

『日本侠客伝 斬り込み』(1967年9月公開・東映、脚本: 笠原和夫)のリメイク。
本作の公開が1970年1月なので、信じられないことにわずか2年4ヶ月で、しかも東映のヒットシリーズの丸パクリ作品を、日活で作ってしまったことになります。
いくらなんでも、笠原和夫が黙ってはいないと思うのだが、「入山次郎」なる名前を立てて謝礼でもしたのだろうか。

マキノ自伝「映画渡世」によると、『日本侠客伝 花と龍』(1969)の撮影中にマキノは両足を骨折したのだが、「そんな私の状態を知りながら、岡田茂製作本部長が私を日活へ売った」のだそうで、仕方なく日活で撮った二作品のうち一作品は、「当時の東映任侠映画路線の二本のヒットシリーズ『日本侠客伝』と『昭和残侠伝』をミックスした『日本残侠伝』(1969)で、もう一作品が本作なのだから、もう、やけのやんぱち。
おまけに本作では、ヒロインを山本陽子にするつもりが、日活から和泉雅子を押しつけられたと、マキノはこぼしています。

ストーリーは、個人的にも大好きな痛快作『斬り込み』とほとんど同じ。
なのにすこしも面白くない。
どこを手を抜いている、というわけでもないんですが、数多いマキノのリメイク作のなかでも、これが最悪ではないかと思うほどつまらない。

『斬り込み』では、殴り込みのあとで健さんが逃げてしまうラストに大喜びしたのだけれど、本作の高橋英樹はおとなしく警察の縛につく。
ラストで主人公が手錠をかけられて責任を取るのがやくざ映画の美学だ、というのは、すくなくともマキノ作品に関しては間違っていて、マキノの主人公はもっと自由で、法の裁きよりも高いレベルのモラルに準じているのだと思います。この改変はたぶん、日活からの圧力の結果なのではないか。

高橋英樹はリアクションが過剰で、どう見ても垢抜けない、おっちょこちょいなやくざものに見えてしまい、小林旭との珍妙なデュエット曲に乗せた殴り込みの道行きシーンは、ふざけているとしか思えません。
和泉雅子はどこまでももっさりとして、いつものマキノ流の「女の情け」の演技を、まったく付けてもらっていないようです。
そんなふたりを盛り上げるはずのテキ屋長屋の人々も、いつになく冷淡でよそよそしい。

かといって、文句の付けようのなくキッチリ仕事をこなしているのだから、さすが、仕事の投げ方まで堂に入っているなと、妙なところで感心するしかない作品でした。


(CS鑑賞 2008/05/28記)


< 目次に戻る

Google