★★★★☆
奇跡的な映画
聾唖者である主人公にはもちろん科白はなく、科白とは思えないようなくだらないオシャベリしかないような日常から、どうしてこんな奇跡が生まれてくるのか。
始めて海に入った主人公(真木蔵人)の背後の海でピチピチと銀色に跳ねる魚たちや、主人公の後でゴミ収集の助手になった青年が堤防に置きっぱなしにされたあとで、なにげなく風に飛ばされるハンバーガーの包みなど、ほとんど僥倖のように自然に画面に、定着した事物が、忘れがたい詩になって、記憶に焼き付く。主人公の真似をしてサーフィンを始める小磯勝弥ら凸凹コンビの狂言回しとしての使い方など、古典劇を見ているほどの完成度。
終幕の回想のフラッシュバックを見ていると、そういうつもりで撮られたのではないのだろうが、「3-4x10月」のラストショットは夢オチではなく、死の間際の主人公の幻影のようにも思えてしまう。
ときに説明過多な音楽は、なければどんなによかったか。