帰ってきた モニターの中の映画館

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ヒロ子とヒロシ(痴漢電車 びんかん指先案内人)

監督: 加藤義一 

2007年

脚本: 城定秀夫
撮影: 創優和
出演: 荒川美姫, なかみつせいじ, 佐々木基子, 華沢レモン, サーモン鮭山, 岡田智宏, 佐倉萌


★★★☆痴漢電車神話

城定秀夫脚本作品。
これを観に行った劇場で、本作が2007年度ピンク大賞、作品賞、監督賞、脚本賞、男優賞、新人女優賞を受賞したことを知りました。

電車の中で痴漢をする男とされる女。
物語は、それぞれのやるせない過去にフラッシュバックして、痴漢という行為が、いかにして彼らの人生のターニングポイントになったかが、主人公の男女(荒川美姫、なかみつせいじ)自身のモノローグによって語られます。

かなりコミカルに描かれた彼らの過去を通じて、観る側は荒川美姫には好感を、なかみつせいじには反感を抱かざるを得ないのだけれど、そんな彼らの人生が転落の一途をたどる図式的な対比のおもしろさが、物語の前半を支えている。

そして、彼らそれぞれの再出発とすれ違いを描く後半。
痴漢という、いけない、ありえない行為が、なぜだか切実に身につまされるものに思えて、泣かされてしまう。

もちろん痴漢なんて、誰もがする/されるわけじゃないし、ましてや、痴漢をする/させる男女が、それぞれの人生を変えるほどの深い交感をもつ、という状況は、ものすごく特殊で、ピンク映画としてのご都合主義にすぎないわけですが、そういうあたりまえのことを、みごとに逆手にとって、普遍性を与えたっていうのが、この脚本のすごいところ。

ここで気づかされてしまうのは、他人との深い出会いというのは、実際はそのほとんどが、雑事に埋もれた現実の出会いではなく、伝達手段やら媒体やらを介した、虚像の相手との一瞬の出会いなのではないかという逆説で、それが真実だからこそ、お互いの顔が見えない、女性の背後からの [被] 痴漢行為を通じた男女の交感という特殊な様態に、共感せざるを得ないのです。

逆説はあくまでも逆説だという健全な感覚が、物語を後味のよいものにしているのですが、それを認めざるを得ない自分にせつなさを感じるというのも、また一つの事実で、ほんとうは逆説のなかで生き続けていたほうが、人間は幸せなのかな、とか考えてしまいます。

加藤義一監督作品は初めて観たんですが、丁寧で安定した、わかりやすい演出。
でも、この題材に対しては、もっとシニカルに、グサッと主人公たちの愚かさを見せながら、電車内での痴漢に追い詰めてほしかったなと思います。

それから細かいことだけど、昼間の [被] 痴漢行為を思い出しながら、それぞれ深夜の自宅でオナニーにふける主人公たちをクロスカッティングさせるシークエンスが男の自宅の外観で終わるというのは、ぼくは、主人公たちがじつはものすごく近所に住んでいたというのがオチで、それの伏線かと勘違いしたんですが。

4月26日新文芸坐での第20回ピンク大賞でも上映されるそうで、必見。

(2008/03/05 ポレポレ東中野 R18 LOVE CINEMA SHOWCASE Vol.4 2008/03/24記)


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