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やくざ刑罰史 私刑(リンチ)

監督: 石井輝男

1969年

  

企画: 岡田茂, 天尾完次
助監督: 依田智臣
脚本: 石井輝男, 掛札昌裕
撮影: 古谷伸
音楽: 鏑木創
美術: 井川徳道
録音: 野津裕男
照明: 和多田弘
編集: 神田忠男
出演: 【江戸篇】大友柳太朗, 菅原文太, 林真一郎, 石橋蓮司, 宮内洋, 藤田佳子, 小山陽子, 賀川雪絵
【明治篇】大木実, 山本豊三, 橋ますみ, 伊藤久哉, 西田良, 簑和田良太, 英美枝
【昭和篇】吉田輝雄, 藤木孝, 千葉敏郎, 沢彰謙, 片山由美子, 高英男, 林彰太郎, 江上正伍, 吉田潔, 河崎操, 宮城幸生, 友金敏雄, 木山佳, 三笠れい子


★★★★絶好調の快作

オランダの "Japan Shock" からのリリース(Region ALL/PAL)。例によって外箱(上画像左)入り。画質は、まずまずというべき。

2005年8月12日に逝去した石井監督は、81歳というご高齢を考えると大往生といってもいいのだが、2年ほど前の上映会会場ですこしお話しした際も、60代の働き盛りかと普通に思ってしまうピシリとした話しぶりや身のこなしに接して、「(『盲獣vs一寸法師』の)次回作も期待してます」という言葉を、自分に限らず誰もがお世辞でなく口にしていたのだった。ご冥福をお祈りします。
本作は製作当時、"異常性愛路線" の絶好調期にあった監督自身が「時代劇、任侠映画、ギャング映画の3本をいっぺんに見たような気分にさせますよ」(「石井輝男映画魂」(ワイズ出版刊))と意気込みをみせたオムニバス作品。それぞれが独立した長編に充分引き延ばせるはずの3篇を、むりやり96分に押し込んだ過剰なサービス精神が、いかにも石井輝男らしい。

丸焼きにされたり、生きたまま砂に埋められたり、自動車に引きずられたり、ドリルで手に穴をあけられたり、焼きごてを当てられたり、タイトルバックからして残酷拷問シーンの連続なのだが、ここでタイトルの「刑罰史」というモンド的体裁を見せておくだけで、いつもどおり本編とはまったく関係なし。贅沢だなあ。

【江戸篇】は、「盗みをするな」「間男するな」という渡世人の掟をめぐる時代劇。
強欲な親分(菅井一郎)がむりやり手込めにした女(藤田佳子)に惚れてしまった菅原文太。
重病の父親を抱えた女(小山陽子)のために、つい賭場のあがりに手を付けてしまった林真一郎。
やくざ家業の法度を犯したふたりは、親分の命令で容赦のない拷問にかけられるのだが、あまりの非情を見かねた代貸(大友柳太朗)が謀反を起こし、身を挺して彼らを助ける、という話。
菅原兄ィは指を詰めるわ、目玉を抉られるわ、大変なことになるのだし、大友柳太朗がさすがの剛剣を振りまわせば、血がドバドバと噴出する。このふたりの顔合わせでスプラッタ時代劇、という意外性がおもしろい。

密度の濃い話を、30分ほどに納めているわけだから、説明は登場人物のモノローグにまかせて話をすっ飛ばすのだけれど、それでもぎこちなさを感じさせない手腕はさすがというしかない。菅原文太が大友柳太朗との会話の最中に黙り込んだかと思うと、女とのこれまでのいきさつを丸ごと回想してしまうのは、作劇としてはメチャクチャなのだけれど、それさえ作品のテンポを崩さない。
勧善懲悪のカタルシスには忠実なので、まむしと呼ばれる根性のねじ曲がった石橋蓮司が、舌を切られて死ぬところなんかも、嫌みなく見られる。

【明治篇】は、「親分並び一家に迷惑を及ぼしたる者は所払いに処することあり。所払いを受けし者がふたたび士地に戻りたる時は、理由の如何にかかわらず、白刃を以て制裁を加えるものなり」という、やくざの家憲をめぐる話。
当時としても観客が見飽きていたはずの、きわめてオーソドックスな任侠ものだし、残酷描写も所払いを受けた大木実が瓶で右手を潰されるのと、蓑和田良太が竹藪に縛られて小便をかけられて、ヤブ蚊に喰われまくる、という、東映的には普通レベルなので、お目当ては竹久夢二的美女の橋ますみに集中する。
大木実との恋を引き裂かれ、労咳病みの夫を持ったら、その男は大木の宿敵だった、なんていうメロドラマのさなかで苦悶する彼女のはかなげな表情をもっと凝視したいと思うのだけれど、いかんせん駆け足の展開。普通に90分で撮れば、辛抱たまらんせつない傑作になったのではないか。

検索をしていると、まぜるなきけんというサイトの博識な筆者が、本作のロケ地巡り(2005/8/10、17、20日付分)をされてるのを見つけた。すごいですね。尊敬します。
それから上掲のジャケット写真では、大木実が顔をざっくり斬られてますけど、こんなシーンは本編中にありません。

【昭和篇】は、「組の組織を破壊、秘密を漏洩せる者は理由の如何にかかわらずこれを抹殺する」という暴力団の掟をめぐる話、というか、掟なんてあってなきがごとしの、騙し合い、殺し合いのストーリー。
二つの組織の間で繰り広げられる、金の延べ棒の争奪戦に、謎のスナイパー・吉田輝雄がからむ、石井輝男流荒唐無稽アクション度最大の大快作なのだけれど、これまたあまりに短くて、異常に息せき切った展開である。
とくに冒頭数分の圧縮度はすさまじい限り。金塊入りらしいアタッシュケースを運ぶ男を、見つめる吉田輝男の顔がちらりと映ると、おそろしくキレのいいタイミングで画面に滑り込んでくるゴケミドロ=高英男が男を拉致、男を乗せた車を運転する藤木孝、その車を追跡する別の車がマシンガン攻撃、さらに上空からは沢彰謙を乗せたヘリコプターが飛来し、ロープで男をさらって……。

この大混乱の最中に、高英男がライフルで遠方のガスタンクを狙い撃ちして意味もなく大爆発させたり、ヘリコプターから吊り下げられていたぶられる男を見つめる藤木、高、吉田の表情が、めまぐるしくカットバックされるたびに笑っていたり、驚いていたり、悔しがっているようだったり、だれがどうなっているのやらわけがわからない (それでもアクションは、ちゃんと流れている)。
いいからいいから、とにかく撮ってれば、編集でどうにでもなるから、なんて言いながら、ペロリと難易度の高い撮影を済ませてしまうこの監督の現場が目に浮かぶようです。

まるで新東宝時代がよみがえったかのような、吉田輝雄のややコミカルなヒーローぶりも楽しいし、港やら、別荘やら、カジノやら、倉庫やらと、おなじみの舞台が惜しげなく登場するし、シャレや笑いを含みながらの、あれやこれやの趣向を凝らしたバイオレンスの数々もたっぷりと見物できる。
アクションやベッドシーン(お色気担当は片山由美子)に挟まれた、ヨーヨーをしながら高英男が裏切り者当てゲームをするエピソードの繰り返しなんて、音楽的ともいえるセンスのよさを証明しているようで、その結果見せられるのが宮城幸生の顔面オイルライター焼きと、河崎操がミンチと化す人間スクラップのゲロゲロ場面だっていうのが、石井テイスト全開である。

マカロニウェスタンふうの決闘で、すべての確執がきれいさっぱり掃除されるラストの爽快感もすばらしい。
めまぐるしく変わる趣向に合わせて、ビッグバンドジャズ、マカロニ風、アヴァンギャルド風、乱歩美女シリーズ的サスペンス風と七変化する鏑木創の音楽も最高で、石井輝男ファンには最高の贈り物ですね。

さて、jmdb、goo映画、allcinema ONLINE 等の各データでは、「脚本……掛札昌裕」「音楽……八木正生」となっているが、本編クレジットは上記の通り。jmdb では以前も『花と嵐とギャング』のデータで「石井輝男映画魂」記載のデータと同じ間違いをしているのを見つけたのだが、今回も「石井輝男映画魂」と同じ間違いをしている。ひょっとしてデータミスのおおもとは、「石井輝男映画魂」なのではないか、と思った。

【付録】
DVDには縮小ロビーカード4枚が付録に付いていて、これはその中の1枚。本編中にないショット。
これからカップルが、コンクリート詰めにされるところ。

高英男が片山由美子の衣服をむしりながら(?)、嬉しそうにいたぶってるけど、片山の顔が見えないのは残念。もしかして吹き替えなのか。



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