★★☆
久我美子だから、いいか
新東宝時代。
恐妻家の大学教授の家に、姪の家出娘が飛び込んで、家庭を引っかき回す。そこに教授の知人の若者たちも絡んで……。というと、まるっきり小津安二郎の「淑女は何を忘れたか」とおんなじ設定ですね。そう、ほとんどおんなじような話です。ただし原作は、別個のラジオドラマだそうな。
スクリューボールコメディを思わせる軽快な小津作品(1937)に比べると、戦後が色濃い世相の暗さが反映した、ややくすんだタッチのコメディで、家出娘アコちゃん(久我美子)のいたずらも、度が過ぎて困ったものばかり。聡明そうなあのマスクで、あっけらかんの馬鹿娘役は、ちょっとつらそうな気がする。
アコちゃん大活躍の都会派コメディという印象のDVDパッケージは、ひっかけっぽい。実際は大学教授夫妻(森雅之・水戸光子)の倦怠期乗り越え物語が主眼。観客が期待した通りの、ほのぼのめでたしの幕切れなのだけれど、最後のショットが冒頭に円還してしまうところに、人間ってそんなに変われるもんじゃありませんっていう、ちょっとしたペーソスも込められている。
隣家の医者夫妻(伊藤雄之助・望月優子)が、とてもおかしい。ちなみに、医者夫妻が夜道を帰宅する際、なぜだか懐中電灯の灯が点るアップが挿入されるあたり、のちの金田一シリーズでたくさんお目にかかる、意味なし感覚ショットのハシリですね。