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海女の化物屋敷

監督: 曲谷守平

1959年


★★★海女ですよ、お化けですよ

新東宝、夏の恒例だった「海女もの」映画の第一作。
ペラペラのビキニ型の海女装束をまとった女優さんたちが、作品中の小道具(水中銃、魚籠(びく)、網、ミイラ)なんかと一緒に、活人画よろしく一生懸命静止ポーズを取っているタイトルバックには、モノクロ・シネスコ画面をスタイリッシュに使った、シュールでヘンな味わいがある。
なぜか一人、牛の頭蓋骨を持ってる女の子がいるんだが、それってこの作品と、なんの関係もないんですけど……。
しかし、そもそもなぜ海女なのか、というのは、海女という職業が無形文化財扱いになった現代ではよくわからない感覚だが、のっけから、ムッチリ、スケスケのポロリンで、見ればなるほどと納得できちゃう。被害者と老婆以外、ほぼすべての出演女優に、半裸になっていただくサービスぶりです。

お話は、幽霊がらみの殺人事件に、旧家の宝探しが絡んだもの。
その幽霊が海女、というわけではない。
「海女」と「化物屋敷」が出てくるというだけで、それを「海女の化物屋敷」とまとめてしまうところが、大蔵イズムである。
ほとんどがロケーション(新東宝得意の、近場の千葉の海岸)なのだが、「化物屋敷」のセットだけは一点豪華主義で、不気味な骨董品を並べて雰囲気を出している。黒猫や停電なんかの予兆を使ったり、蝋燭や懐中電灯の光で視界を狭めたりという、幽霊出現の常套テクニックが、この雰囲気のおかげで、けっこう怖かったりもする(タイミングよく飛び降りる黒猫には、ツンツンと引っぱったのであろう、黒い糸が結ばれているのが見える)。
ほかにも海女同士の泥レスシーンあり、三原葉子の貞操(?)危うしシーンあり、てんこ盛りの82分にしては、思ったほど破綻がない、というテレビのサスペンスドラマ並の出来なのだが、役者たちの演技の濃さが、やっぱりおもしろい。

菅原文太の初主演作だそうで、すらりと長い脚でスーツを着こなした姿に、ファッションモデル出身という経歴が納得できるのだが、まだ、ただの若手俳優の一人、といった印象だ。
三原葉子は、残念ながら海女ではなく、東京からやってくる文太刑事のガールフレンドだが、ちゃんとお風呂にも入るし、謎解き場面は(なぜだか)ストリップ仕立てだし、悪人に捕まってからは(これもほんとうになぜだか)下着姿になっている。
悪人に荷担するハスッパな海女に万里昌代、幽霊に脅かされるお嬢さんに瀬戸麗子。社内の俳優をぐるぐる回して使っている新東宝映画を見ていると、それらしい役をやっていさえすれば、なんだか絶妙の配役のように思えてくるし、見るたびにお馴染みの顔が増えていくのも嬉しい。

怪しい大学教授(まさかこんなゲスな教授はいないでしょう)役に、「地獄」の沼田曜一。もう大はしゃぎで、人殺しと悪徳行為とサド人格を演じている。
この人、DVDオプションの経歴を見ると、東宝争議で東宝を追い出された志の高い人たちが作った「真空地帯」や「雲ながるる果てに」などの良心作に出演したあとで、手のひらを返したように(というと失礼だが)、敵方(という言い方も失礼だが)の新東宝に入社して、この手の映画に出まくっている(かなり珍しいケースなんではないか)。
きっと、こういう役をやるのが楽しくて、新東宝に入った方なんだろう。俳優の過剰な情熱が、監督の統制を逃れてムキダシになっているのも、新東宝映画の見所の一つ。
くだらないながら、あれこれいろんな喜びをもたらしてくれる映画なので、★一つ追加である。

DVD特典には、あんまり必要とも思えない人物相関図に加えて、「海女と遺跡と埋蔵金」なるコラム集が付いている。無記名ライターによる、他書籍からのダイジェストらしい苦しい企画で、「日本列島埋蔵金マップ」や「埋蔵金の法律知識 Q&A」までついてるんだけど、まさかこの映画に影響されて、埋蔵金探索に乗り出す人もいないよね。


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