帰ってきた モニターの中の映画館

日本映画>ロマンポルノ>女銀行員 暴行オフィス

女銀行員 暴行オフィス

監督: 西村昭五郎 

1985年

脚本: 桂千穂
撮影: 杉本一海
選曲: 山川繁
出演: 麻生かおり, 清元香夜, 川上伸之, 木築沙絵子, 手塚英明, 益富信孝


★★あと一押し、がない

かねてから直属の部下の女子行員(麻生かおり)に思いを寄せていた東大出の若きエリート行員(川上伸之)。
彼女とふたりきりで居残り残業をしていると、日頃のムラムラが爆発。ホチキスで乳首をつまみながら彼女を脅し、我を忘れてレイプしてしまうのだった。
しかし、ヒロインは平然と翌日から出行し、何気ない仕草でエリート行員を精神的に追いつめる。ボクを恐喝したいのかと怯えたエリート行員は、すっかりあわてふためき、給料はすべて母親に差し押さえられてしまうから、架空口座からの不正集金をして口止めの金を与えるのだが、彼女は受け取らない。それどころか、わたしも課長のことがずっと好きでしたというヒロインに、エリート行員はすっかりのぼせ上がってしまって……。

……被虐のヒロインものか、と思ったのも束の間、逆に男を翻弄しはじめたヒロインを見て、桂千穂お得意の悪女ピカレスクなのね、と納得しかけるのだが、それもまた微妙にハズレ、という肩すかしがおもしろい。
ヒロインはエリート行員を魅了した清楚な女性でも、彼を脅かした悪女でもなく、レイプを屁とも思わないふしだらな生活を自然体で送っている、倫理を超越した女だったのです。

エリート行員はヒロインとの結婚を夢見るのだけれど、ヒロインの乱交を黙認する彼女のフィアンセ(手塚英明)や、そのフィアンセと関係している女子高生の妹(木築沙絵子)など、彼女を取り巻く「超越」した人々と出会って、錯乱状態に陥り、自ら決定的な破局を招いてしまう。

マザコンのエリート行員が固守する潔癖な世界観と、なんの疑いもなく倫理を超越した生活を謳歌しているヒロインたちの世界観が、最後まで平行線をたどったまま、一方は勝手に自滅し、他方は彼らなりの行動原理に従って生きているだけだという悪意の塊のような話で、そう、ちょうど『悪魔のいけにえ』の殺人者一家と犠牲者の関係にそっくりなんですね。
でも、ヒロイン側がそんなに常軌を逸して狂っているわけではないので、こちらの興奮もそこそこ、といった程度。
二つの世界の間に、得意先の実業家(益富信孝)の愛人になっている、ヒロインの同僚の女子行員(清元香夜)の現世的なエピソードが挿入されるのも、ふつうの映画としての「緩衝剤」になってはいるのだけれど、『暴行切り裂きジャック』の問答無用な異常世界から、映画を遠ざけることになっています。

西村昭五郎の演出は、けっして手を抜いているわけでなく、ヒロインの誘惑シーンのエロスやレイプシーンの迫力はお手のものだし、ヒロインのシャワーシーンを俯瞰で撮影した場面なんかは、ひょっとしてこのたいした意味のないシーンのために、わざわざ浴室のセットを組んだのかも、と思います。
それでも、あと一押しが感じられないってのは、誰の責任というわけでもなく、ロマンポルノ全体の疲弊なんだろうな、という印象を受けました。

 (ビデオ鑑賞 2007/8/4記)


< 目次に戻る

Google