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OL日記 牝猫の情事

監督: 加藤彰 

1972年

脚本: 加藤彰
撮影: 姫田真佐久
音楽: 月見里太一
美術: 渡辺平八郎
出演: 中川梨絵, 山田克朗, 絵沢萠子, 織田俊彦, 宮下順子, 葵三津子, 久遠利三


★★☆中川梨絵、狂気のショーケース

加藤彰監督は、ロマンポルノ以前の日活で助監督を務め、ロマンポルノ第二弾の『恋狂い』(1971.12)から監督に昇格した、最も古い世代。「かつては小説家を目指した」(「官能のプログラム・ピクチュア」フィルムアート社刊)のだというこの人の、いかにも純文学っぽい臭いがする。
本作にも(この監督が脚本家として関わったことのある)中平康の気取りみたいなものが感じられて、個人的にはちょっと苦手かも。

商事会社の次長(山田克朗)が、部下のOL(中川梨絵)の見合いの世話をするのだが、彼女はいい反応をしない。その後、欠勤が続いた中川梨絵を心配して、山田は彼女のマンションを訪ねる。中川は自分の身の上を語りはじめたかと思うと、いきなり毒入り紅茶で山田との無理心中を画策。それが失敗すると、ドアに錠をかけ、鍵を高層階の窓から捨ててしまう……。
なんと、女が年上の男を監禁する、という異例の展開。

あいかわらず、すごいんですよ。中川梨絵の狂気の爆発が。
毒殺に失敗したとたん、ドロドロドロッと音楽が鳴って床に崩れ落ちて、あとは狂いっぱなし。密室の中なもので、誰も止められません。
あくまでも冷静にオトナの対応をする次長さんも、あの手この手で体を求められてついフラフラとなりかけるのだけれど、鬼気迫るオナニーを見せつけられて、逆に背筋が冷たくなってしまうという過剰ぶり。
神代辰巳、田中登と、どんなにアクの強い監督の作品に出演しても、作品世界を圧倒するかのようなクレージー宇宙に突入してしまうこの特異な女優の、狂気の独り芝居(「相手」がいても、いないようなもの)を堪能できる作品であることはまちがいない。

急激なパンをしても、ピタリと吸いつくように人物をとらえたり、室内の激しい動きを執拗に手持ちカメラのアップで追いかけたり、といった姫田真佐久のカメラワークも気持ちがよくて、室内劇の窮屈さを感じさせない。中川梨絵と山田克朗のもみ合いの激しさを、わざとピンぼけで表現するという、ちょっとめずらしい試みもある。

ただしどうしても共感しかねるのは、この作品の「狂気」というものに対する傍観的な姿勢で、世の中には淫蕩の血筋というものもあるのだなと、一歩身を引いた立場での同情心から女を抱くなんていうヌルい展開は、最低だと思う。
シュールで色彩豊かな幻想シーンの挿入もあって、そういう感覚的な実験に小沼勝が先輩として敬意を表するというのもわかるのだけれど、狂気の内側に踏み込めるかどうかという一線において、加藤彰はこっち側の人、小沼勝はあっち側にも行ける人である。


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