モニターの中の映画館

日本映画>ピンク>イノセント・キス (姉妹どんぶり 抜かずに中で)

イノセント・キス (姉妹どんぶり 抜かずに中で)

監督: 吉行由美 

1997年

製作・配給: 大蔵映画
助監督: 瀧島弘義
脚本: 五代暁子
撮影: 小西泰正
音楽: 加藤キーチ
録音: ニューメグロスタジオ
照明: 渡波洋行
編集: 酒井正次
出演: 貴奈子, 石川雄也, 吉行由実, 神無月蘭, 畠山たくみ, 山ノ手ぐり子, 細谷隆広, 葉月蛍, 荒木太郎


★★★いや、すごい特典映像でした

男女の友情って成立するの? 恋人と友達ってどう違うの? セックスをした後も友達でいられるの? って問題を、オサレな感覚で描いたピンク映画。
「まん性発情不倫妻」に続く第二作で、「私の映画に私という女優は必要ないんだ」と自覚した女優出身の吉行監督が、(ホラー、グロ映画にしばしば起用される)外見とは違う自分の内面を表現するために、貴奈子という分身を主役にして撮った作品、なのだそうだ(DVD特典のインタビューによる)。レディスコミック、っていうのは、あまりよく知らないのだが、こんな話が多いんだろうな、という感じです。

いや、続きを書こうとしても、本編を観た後でなにげなく再生した、付録の「Sentimental Melonsoda」という短編を観たショックで、まだ動悸がおさまらない状態です。二十代の頃から老け役が多かった、という、吉行由美自身が演じる、ある日の「高校生」カップルのラブラブ・デート風景なんですけど……(この映像、佐々木浩久監督の「刑事発狂」の一部に使われたものの完全版らしい)。
さらに追い打ちをかけるように、「Sentimental Melonsoda(フレンチクルーラーのレシピ)」という短編では、同じくなりきり女子高生の吉行由美と林由美香が、本編中に使われたフレンチクルーラー(ドーナッツ)を作るのだけれど、なんだかすごいものができあがっているぞ。
あまりにもストレートに自分というものを誇示する過激な手段に屈服して、☆を追加します。

話を元に戻すと、サトウトシキや上野俊哉作品を撮影している小西泰正の野外撮影がとても綺麗で、服装の配色もすばらしいし、ヒロインの男友達役の石川雄也の暗いけど飄々とした感じのするマスクが独特の雰囲気を出して、ケース裏の惹句通り、エリック・ロメールの映画みたいに見える瞬間が何度もある。
学生時代からお互いに恋愛感情を持っていないと信じてきた友達同士の男女(石川雄也・貴奈子)が、それぞれパートナーができても、ずっと友達だと信じている。そのうち女は求婚され、男は女の妹と関係を結んでしまって……というお話も、まるでロメールのよう(男の同棲相手を、吉行由美自身が演じている)。

この映画の演出には、非常にウジウジ・ウダウダした話を、いかにサッパリ見せるか、という意図もあったらしくて、その意味ではほとんど肉体性を感じさせない主人公二人はふさわしいのだけれど、(「きなこ」という芸名どおり)ヒロインがあまりにも地味だし、ふたりとも演技はできなくてもいいけど、もうすこし芝居を付けるべきだったと思うし、ダンキンドーナッツのメニューや手話に心情を託すのがあまりに安直で、気恥ずかしい。さらに自然な会話が命、といった、こういう映画の場合、アフレコの口が意図していないふうに合わない、というのは、致命的な気がする。
そもそもウジウジ・ウダウダと甘えている時点で、趣味的に気がひけるのだけれど、もっとも信じがたいのは、あの男のさよならの態度である。

[以下ネタバレ]
ずっと心の底に秘めてきた恋情を意識したふたりが、初めての関係を結んだ後で、男は「ごめん」と書いたメモを熱帯魚の水槽にテープで留めて、立ち去るわけです。そのメモ書きの用紙は、6穴タイプのシステム手帳の1ページなわけなのだが、その紙の端に空いている穴が、なんと破れていない。
つまりこの男は、システム手帳の留め金をパチンと外してから、紙を丁寧に取り出しているわけで、こんな場合、手帳の1ページもビリッと破り取れない男ってなんなのだろう。いかに自分がふがいなくても、いったん外した後でマズイと思って、また破り直しますよ。絶対。
案の定このふたりは、女の結婚後もまたまたお友達再開をしてしまうわけで、ウジウジ・ウダウダをサッパリ見せる映像としては成功を収めているものの、永遠の少女趣味を夢見たい女の子感覚には、取り残されるばかりなのだった。

ラストシーンの映画館の座席に座った観客役で、頭半分を覗かせているのが、どうも友情出演の葉月蛍みたいです。


< 目次に戻る

Google