| 吸血蛾
監督: 中川信夫
1956年
配給: 東宝
原作: 横溝正史
脚本: 小國英雄, 西島大
撮影: 安本淳
音楽: 佐藤勝
美術: 北猛夫, 安倍輝明
出演: 久慈あさみ, 塩沢登代路, 万里陽子, 白鳩真弓, 伊原律子, 安西郷子, 立花満枝, 花房一美, 宮田芳子, 記平佳枝, 大久保豊子,
有島一郎, 東野英治郎, 斎藤達雄, 千秋実, 大村千吉, 太田芳勝, 中北千枝子, 池部良, 小堀明男, 草間璋夫, 熊谷二良
★★★ 怪奇ムードに浸れます
狼の牙を持つ謎の男が、人気ファッションデザイナー(久慈あさみ)につきまとう。所属モデルたちは、次々と淫楽殺人魔の手で殺され、犯人のメッセージとして残された蛾の標本から、謎の昆虫学者(東野英治郎)が容疑者に浮かぶ。
モデル(安西郷子)とジャーナリスト(千秋実)のカップルの冒険や、金田一耕助(池部良)と等々力刑事(小堀明男)の捜査もむなしく、死体は続々と増えるばかり。
久慈あさみのパトロン(斎藤達雄)があやしい、いや、マネージャー(有島一郎)もヘンだ、そして久慈自身も……でも全員死ぬんだけど、という話。
横溝ブームだった頃に原作を読んで、あんまりな展開に中坊ながら呆れてしまった記憶があって、これは横溝ミステリ史上(「八つ墓村」の回想場面を除けば)、最も無駄に悪趣味に大量に人が死んでいく、金田一耕助の無能ぶりが発揮された作品でした。最後は銀座の街中に、残りのモデルたち全員の血まみれの全裸死体がディスプレイされる、みたいなオチだったと思う。
こんな、誰が殺されても犯人でも狼男でもかまわない原作を前に脚本家(小國英雄、西島大)は、解決放棄で混乱丸投げの『三つ数えろ』方式でやっちゃえ、と開き直ったんじゃないでしょうか。
中川信夫は、作品の中身がなければないで怪奇見世物の画作りに徹することができる監督だから、華やかなファッションショーの舞台裏とか、蛾の研究家の資料館とか、まだ暗闇がたくさん残っていた頃の東京の片隅の風景とか、場末のマネキン工場とか、そんな陰翳に富んだ風景のなかにバラバラ死体を散りばめた和製グランギニョールとしてよくできている。
ファッションショーの舞台が繰り返し登場するので、女優さんの見せ場もたっぷり。久慈あさみは顔がデカいのでモデルっぽくないけど、安西郷子のクールな美貌が楽しめました。
原作のラストに置かれた大量虐殺が、映画では廃墟のビルを舞台にした犯人と警官隊の銃撃アクションに差し変わっていて、原作の後味の悪さを払拭しています。
池部良の金田一は悪くないと思うんだけど、探偵の存在する意味のないこんな話を振られて、運がなかった。
(2009/6/5 シネマヴェーラ渋谷「シナリオライター小國英雄のすべて」 2009/6/6記)
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