★★★
この脚本にしては残念かな
中国沿岸から北九州の西海岸沖に出没する海賊船の物語。
船長の三船敏郎、キレ者の航海士の大谷友右衛門、射撃の名手の田崎潤、おしゃべりな船員の森繁久弥、うすのろのコックの上田吉二郎などなど、小國英雄脚本らしくみごとにキャラ立ちした男たちが登場して、それぞれの個性がドラマを作っていきます。
密輸船しか襲わない、というのが三船船長のモットーで、襲撃されるほうも悪事を働いているから訴えることができず、海賊たちも罪の意識がない。体を張った男のさわやかな海の仕事として、日夜強盗行為に励む彼らなのでした。
しかし、中国の港から四人の浮浪児たちがひそかに乗り込んだことから、この理想的な均衡を保ったホモソーシャルな関係が崩壊しはじめます。しかも、浮浪児の年長者が少年を装った若い娘(浅茅しのぶ)だったとなればなおさら……。
船(海賊船)に女は御法度、というのは、昔ながらの海洋物語の万国共通共通のルールなので、それを破ったら破滅に向かうしかない物語には神話的な説得力があります。
荒くれの無骨者ながら、子供に対しては残忍になれない船長のキャラクターは、三船敏郎のイメージそのものを見るようで無理なく楽しませてくれるし、前半のさりげない伏線を使ったクライマックスの危機脱出劇にあっと驚いてしまう一方で、『インファナル・アフェア』みたいなオチと子供を使った泣かせの場面は思った通りなのだけれど、やっぱり涙を絞られてしまう。
この、予想を裏切る展開を絡めた予想通りの結末の匙加減が、じつに快感です。
でも演出は、ナレーションを使った人物紹介の冒頭からして子供向けっぽいし、海上ロケ撮影を多用した銃撃戦は中途半端なリアリズムで間延びしているし、(フィルムの状態もあるのだろうが)やたらと多い夜間シーンの照明が暗くて音声も聞き取りにくい。
アクション場面がカットされて、戦いがはじまると、次のショットではもう終わっていて、怪我をしたり死んだりしている人がいる、という省略の繰り返しも退屈。
ラストの、海賊船対密輸船軍団の戦いも、空撮で全体の配置を見せるくらいしてほしいのに、暗くて状況がよくわからないんです。
帰宅後に本作のシナリオが収録された「男の花道―小國英雄シナリオ集」を開いてみると、冒頭からして海上保安部の官僚的な怠惰を揶揄するかのような場面が置かれていたりして、映画よりずっと大人向けなんだなー。シナリオで読んだほうがずっと面白い作品です。
セットを作る予算がないとか、子供の客層をあてこみたいとか、海上保安部の協力を得やすくしたいとか、会社の事情があったんでしょうか。
(2009/6/10 シネマヴェーラ渋谷「シナリオライター小國英雄のすべて」 2009/6/11記)