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帰ってきた モニターの中の映画館

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混血児リカ



★★☆只者ではなかった

国内リリースが無理そうなタイトルが気になっていたこの映画(英語タイトル "RICA")が、米 "EXPLOITATION DIGITAL" という米国のレーベルからDVDでリリースされているのを見つけて、誰が作った映画なのかとっさに思い出せなかったんですが、まあおもしろそうだからと思って、シリーズ三作まとめて衝動買いしてしまいました。
帰宅してパッケージに書かれたスタッフ名を読もうとしても、英字が細かくてて読むのが面倒なので、まあ観ているうちにクレジットが出てくるだろうと本編再生をはじめたのだけれど、いつまでたっても表示されない。スタッフ・キャストのクレジットが、最後に流れる映画だったんです。

なんだこれ? 監督と脚本はどこの馬鹿なんだ、と冒頭の展開を観て思いながらも、再生を止めてパッケージを読むのもいやだから、どうせ三流なんだろうけど、パッケージを見ずに、作品を見ながら当ててやれと思ってながめおりました。

映画が始まってすぐに、激しく後悔。
主演の青木リカ(役名も青木リカ)があまりにも不細工で、芝居もできないし、セリフも棒読みだし、かといって周囲がサポートするわけでもなく、全員イモ揃い。
頼りの大友純、内田良平、田中筆子といったベテラン怪優は、ほんの脇役出演だし。
今まで座っていた人が、切り返しショットで立っていたりとか、演出もやる気なさそう。

脚本もひでーな。
東映の『ずべ公番長』みたいなの作って、一発当ててよ、と言われて無理して書きました、みたいな感じで、爽快さ皆無。
この脚本家、とにかくモーレツなのが流行なんでしょ、という認識しかないようで、悲惨な出来事とか残酷描写とかをアクセントにしたり、激情の動機にしたりという意識が希薄で、垂れ流し的に酷いことが起こって、そのまんまなんです。
カッチリと情念を積み上げる、東映スタッフの爪の垢を呑ましてやりたい。

冒頭に出てきたリカの友達7名は、リカが留置されている間にやくざに輪姦されて、香港あたりに売り飛ばされると、そのまま放置だし、ぜんぜん魅力的じゃない人々が、見せ場も与えられずどんどん死んじゃって、特に田中筆子演じるリカ母親のおばあちゃんなんて、なんの病気なんだか顔が真っ黒になって死んでいくし、ドスを刺されたら、さすが東宝、『椿三十郎』状態で加減を知らず血液が噴出するし、リカは梅毒・ヤク中になった母親を突き放して、殺人を犯させるし。

最もひどいのが、セーラー服姿のリカの母親が米兵にレイプされる回想シーンで、
「朝鮮戦争が始まっていた」
「戦争にかりたてられる兵隊は飢えていた」
というテロップが、画面を被わんばかりのデカいサイズで表示されることで、なんだそれ? レイプは歴史の必然なんですか? 今襲われてる女優さんより社会状況の説明が大切なんですか? それ以前に、字があまりにデカすぎて、肝心なシーンが隠れちゃうじゃないですか!
この監督も脚本家も、不良と不良を演じる役者たち、それを見る観客たちに対する、愛のかけらもない冷血漢です。

なんだかもう、トホホを通り越して、どこまで珍品なのかを楽しむ体勢になってしまったのだけれど、しかし随所で感じられる、切れ味の良さはなんなのか。
やくざと取引をして、ナイトクラブに出演する羽目になったリカが、ビキニ姿でアイドル歌謡みたいなのを歌い踊る、異様に薄っぺらくて単調な、長い長い正面ショットを見て、やっぱりこの監督は只者じゃないという気がしてきました。

やたらと人を殺してしまうリカは、すぐに捕まって感化院(劇中では「学園」と呼ばれている)に入れられてしまうのだが、いとも簡単に柵を乗り越えて脱走して、やくざの組を一人で壊滅させて収監されると、なんとまた同じ方法ですぐに脱走してしまう。
大量殺人者も出入り自由なのかよと、あまりに堂々と手抜きを誇示した展開に、モニターを見ながらしばらく爆笑が止まらず、この脚本家も只者じゃないと思いました。

ヒロインがどんな危機に陥っても、一人でやくざの事務所に乗り込むと解決してしまうという不思議な展開を経て、リカが佐藤文紀というひでー男優と協力して、またまた香港に売り飛ばされそうになった女たちを助けるというのが、ラストの見せ場。
女たちは一人ずつ船倉の四角い箱に閉じこめられていて、リカと男が箱を開けると、みんな正面を向いてポンポンと飛び出してくるという、シュールでポップで場違いな演出にびっくり。
箱から出てくるときに、「小便垂れ流し!」と叫ぶ、いやーなリアリズムもあります。

で、さんざん愉快だか不愉快だかわからない思いをした末に、終幕にようやくスタッフ・キャストのクレジットが流れたのだけれど、それを見て唖然。

脚本 新藤兼人
監督 中平康

だって……。想像だにしていなかった。
もしかして、社会派/感覚派優越意識満々の脚本家/監督が、東映的なるものを小馬鹿にして作った映画なのではないですか、これ。
……なんて勝手なことを思いながら、続けて鑑賞した次作『混血児リカ ひとりゆくさすらい旅』に、まんまとノックアウトされることになるのでした。


混血児リカ
監督: 中平康
1972

製作: 安西一人, 高島道吉
原作: 凡天太郎
脚本: 新藤兼人
撮影: 杉田安久利
音楽: 竹村次郎
出演: 青木リカ, 長本和子, 佐藤文紀, 津嘉山正種, 大友純, 内田良平, 初井言栄, 田中筆子

(DVD鑑賞 2008/03/29記)


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