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ハリウッド映画>ギャング映画と50年代までのフィルム・ノワール>暗黒街の弾痕

暗黒街の弾痕

監督: フリッツ・ラング

1937年


★★★☆この題材にしては軟調

COLUMBIA TRISTAR FILM NOIR COLLECTION VOL.1VOL.2 がリリースされ、米国ではワーナーからも「アスファルト・ジャングル」、「ブロンドの殺人者」、「罠」、「過去を逃れて」、「拳銃魔」を含む "Shadows, Lies and Private Eyes: The Film Noir Collection" というボックス・セットが出るそうなので (情報元はDVD fantasium)、いつかまとめて観たいと思っていたフィルム・ノワールも、身近になりそうな気配である。
その予習として観た本作。

恋人(シルヴィア・シドニー)に励まされながら、真人間になろうとする前科者(ヘンリー・フォンダ)が、世間に冷たくあしらわれ、強盗殺人の濡れ衣を着せられて死刑を宣告される。結局、彼の罪は冤罪だったことがわかるのだが、殺人を犯して逃亡をした彼は、恋人と強盗を重ねながら、メキシコ国境を目指す……。

第二次大戦前後にハリウッドを席巻したフィルム・ノワールを予見する作品だとか、何度も映画化された「ボニーとクライド」事件を、最初に採り上げた作品だとか、のちに「駅馬車」(1939)、「海外特派員」(1940)、「クレオパトラ」(1963)などの作品を製作することになるインディペンデント・プロデューサーのウォルター・ウェンジャーが、ハリウッドにラングを認めさせた作品だとか、映画史的には貴重な作品だし、ラングの表現主義的な映像も散見される。
とくに強烈なのが、ヘンリー・フォンダとシルヴィア・シドニーがホテルの庭で見つめるカエルのクローズアップで、ぬめっとした光沢をたたえたつがいのカエルが、蓮の葉の上から暗い水面に飛びこんで、そこに映った二人の影を掻き乱す場面で、その後の暗い運命を暗示させるあたり。

ヘンリー・フォンダの悪人面が適役なのはもちろん、ものすごく癖が強いけれど、とにかく笑顔がかわいらしいカエル顔の美女・シルヴィア・シドニー(「マーズ・アタック!」のおばあちゃん)が、逃避行に出てからしだいに荒廃していく様子はなんとも哀切で、胸を締めつけられる。

しかし、立派な作品だと感心しながらも、楽しめたのかといえばじつはそれほどでもなく、監獄内の汚い描写だとか、ヘンリー・フォンダが刑務所から逃げ出す際の銃撃戦だとか、逃亡を重ねるカップルの強盗場面だとか、現在の感覚では当然見せ場になる場面が、省かれたり、あっさりと描かれたりしているのだから、ヘイズ・コードがまだ真の実効力を持っていたこの時代には、限界も多かったのだろう。
もちろん、暴力や流血やベッドシーンがなくてもすばらしい映画はたくさんあるのだけれど、本作は主題的にも、それらがあったほうが、ずっとおもしろくなったタイプの作品だと思う。


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