★★★★
映画を観なくても死ぬわけじゃないし
1981年といえばもうとっくに、ミュージカル映画というものがなりたちえなかった時代で、観客の側にも、現実の芝居のなかに別次元の歌や踊りが挿入される様式を受容する姿勢が失われてしまっていた。往年の名作も、今以上にしらじらしい視線にさらされていた気がするのだが、そんななかでの唯一の抜け道が、子供向けミュージカルだったのだろう。
じっさいに本作を観ると、孤児院のセットで子供たちが歌い踊る部分には、それが子供だから許されるというあやうさが感じられるのだけれど、ちょっぴりストリートダンス的な要素も加味された生気溢れる振付には、文句なしに感動させられる。
一方、セットではなくてロケで撮影された、ウォーバック邸での歌や踊りとなると話は別で、秘書のグレースを演じたアン・ラインキングのはつらつとしたダンスはすばらしいのだけれど、どうしてそんなとこで踊ってるの、といったしらじさしさがつきまとって、なんだか気恥ずかしい。やはりミュージカルは、オールセットでなきゃダメなんでしょうね。
主役の少女アニー(アイリーン・クイン)のオプティミズムに頼り切った強引な展開にも、どこか薄ら寒いすきま風が吹いていて、ミュージカル黄金期の充実感は望むべくもないのだし、歌や振り付けの技術的な「部分」は再現できても、ミュージカル映画としての「全体」をまとめ上げる求心力に、今ひとつ欠けている。
しかしそういった、どうしても欠けてしまう部分を取り繕うかのように、グロテスクに誇張された孤児院の女経営者(キャロル・バーネット)のキャラクターがすさまじい。
このすばらしい怪女優が画面に登場するたびに、思わずのけぞってしまうほどの異物感を覚えながら、彼女の強烈な過剰演技が、この時季外れの大作ミュージカル映画全体を救っているかのような、あぶなっかしい綱渡に、どうしてこんな奇蹟がありえたのだろうと感嘆してしまう。
この一作で、自分にとってキャロル・バーネットは、永遠の名女優である。
あと、好きなのは、アニーが大富豪のウォールバック(アルバート・フィニー)を映画に誘う台詞。
「映画を観なくても死ぬわけじゃないし」と落胆して見せて、富豪の重たい腰を上げさせるのだけれど、映画にかんして、これ以上の殺し文句はないだろう。
特典映像には、アニーを演じたアイリーン・クインが進行役を務める撮影秘話が収録されている。二十年後のギャップに驚くかと思いきや、そのまんまのイメージで大人になった感じで、なんだか安心した。