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セクシリア
Laberinto de pasiones

監督: ペドロ・アルモドバル Pedro Almodóvar

1982年

  

脚本: Pedro Almodóvar
撮影: A(')ngel Luis Fernández
音楽: Bernardo Bonezzi, Fabio McNamara
出演: Cecilia Roth, Imanol Arias, Helga Liné, Marta Fernández Muro, Fernando Vivanco, Ofelia Angélica, Ángel Alcázar, Concha Grégori


★★★初期作品からして強烈です

アルモドバルの劇場公開長編第2作。原題は「情熱の迷宮」。セクシリアはヒロインの名前です。
これが今のところ、日本で観られる最も初期のアルモドバルの長編で、初劇場公開長編の「ペピ、ルチ、ボンとその他の娘たち」 "Pepi, Luci, Bom y otras chicas del monton" (1980)は、Youtubeにアップされたいくつかの断片から雰囲気をうかがうしかありません。


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お忍びでマドリードを訪れ、ロックバンドのボーカリストになった中東ティラン国の皇太子でホモのリサ。彼が歌う「俺はテヘラン人」を聴いて、試験管ベビー研究者の娘で色情狂のセクシリアは一目惚れ。
しかし、皇室の血筋を得るためにリサの精液を狙う元皇后一味や、リサ誘拐を企むアラブのテロリスト集団がふたりの間に立ちはだかる。
おまけにセクシリアの父親と寝たがる精神分析女医、毎晩のように自分を犯す父親から逃げ出してセクシリアを慕うクリーニング屋の娘、リサにバンドを奪われて逆恨みするボーカリストも乱入して大騒ぎ。
はたしてニンフォマニアとホモ王子の恋の行方は……?

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ホモも乱交も近親相姦ドラッグも当たり前。くだらないテクノポップを延々と聴かせるわ、バナナの皮で滑るわ、オナラ女やらウンコをボトボト漏らす女やら、いやーもう、最低じゃないですか。
ステージにはアルモドバルと彼のゲイ仲間のバンドも登場して、「食事の前に吸って! 食事の後も吸って!」とかいう下品な歌を熱唱します。こんなオカマ野郎がのちに世界的な名監督になるなんて、いったい誰が想像できたのか。
第二作とはいえ、以後の作品をある程度観ていないと面食らってしまう、アルモドバル上級編だという気がします。

本作には、のちにスペインで有名になった若き日の文化人がたくさん出演していて、当地ではカルトムービー化しているのだそうで、日本でいえば『ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け』とか『俗物図鑑』とかみたいな感じなのかな。
しかし、やりたい放題やっているという表向きの印象とは反対に、氾濫するエピソードをきっちりと回収する脚本はきわめてウェルメイド志向だし、カメラの存在を意識させないオーソドックスな演出を目指していて、現時点から振り返ると、「欲望」を追求するアルモドバルの初期衝動が気持ちいいほどストレートに表れた作品です。

次作の『バチ当たり修道院の最期』でテクニックを完成させたアルモドバルは、テーマ性の深化(『グロリアの憂鬱』)、大胆な挑戦(『マタドール 炎のレクイエム』)、初期衝動への回帰(『欲望の法則』)を経て、全作品中で最もウェルメイドな『神経衰弱ぎりぎりの女たち』を撮って世界的に評価される(ビリー・ワイルダーのお気に入りにもなった)のだけれど、これをハリウッド進出の足がかりにすることなくスペインにとどまり、自主製作体制のプロダクションで、メジャーではできないきわどい作品を作り続けます。

商業映画のセオリーとして、やってはならないとされていて、失敗が目に見えているアマチュアっぽい試み――映画ジャンルの混交、同性愛者と女性への信頼、善悪を裁かない結末、エピソードの過飽和、語りや時間軸の複雑化――を『アタメ 私を縛って!』、『ハイヒール』、『キカ』といった作品であえて繰り返しながら、誰も手を出せない禁じ手を使って、いまや、誰も作れない映画を作るスペシャリストになってしまったかのようです。

『セクシリア』みたいな、勢いさえあればできてしまうかもしれない作品から考えると、『私の秘密の花』以降、『ライブ・フレッシュ』、『オール・アバウト・マイ・マザー』、『トーク・トゥ・ハー』、『バッド・エデュケーション』、『ボルベール〈帰郷〉』の円熟はまさに奇跡としか思えなくて、どうやればこういうものが作れるのかさっぱりわからない、神業のような作品ばかり。

なにがあろうが起ころうが、つねにやりたいことをやり続けるのが吉よ、ってことですね、アルモドバル。

 

次回作 ブロークン・エンバレイシス Los abrazos rotos 壊れた抱擁
予告篇 http://www.youtube.com/watch?v=-fXiuFG0soU


(DVD鑑賞 2009/6/14記)


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