★★★☆
意外なリアリズム→怪奇幻想→大時代なメロドラマ
「バレエ映画の金字塔」だそうで、なるほど豪華で美しいが、品行方正な名作のつもりで観ると、(劇中のオリジナル・バレエ作品である「赤い靴」の原作者、アンデルセンの童話がそうであるように)ちょっと異様なものを観てしまったという気持ちにさせられる。
特に「赤い靴」の舞台シーンは、映像を過剰に作り込んだ結果、映像美というレベルを通り越して、奇矯な表現に到達しているところは、さすが、のちに「血を吸うカメラ」を撮るパウエル作品だけあって、ほとんど怪奇幻想の域である。
前半のテンポのよい、バレエ界の内幕を描く部分が、無類に楽しい。
特典映像のスタッフ・インタビューによると、役者として出演している、当時のバレエ界の大物(よく知らないが、そうらしい)、ロバート・ヘルプマンとレオニード・マシーンの撮影中の確執を、すかさず脚本にも取り入れたのだそうで、夢見がちなムードに油断していると、リアルな感覚に不意をつかれる。
「歴史は女で作られる」でルートヴィヒ一世を演じたアントン・ウォルブルックのバレエ団団長が、有無を言わせない説得力。バレエ・シューズの彫像をなでさするフェティッシュなシーンなんぞは、品がよすぎてもったいないくらい。
ヒロインのモイラ・シアラーは、バレエ界から銀幕に進出してきた人だそうで、舞台シーンはみずみずしいものの、演技力不足は隠せず、とくに作曲家(マリウス・ゴーリング)とのラブシーンなんかは、なんにもしていない。
後半の山場を作る、愛を採るか、芸術を採るかというヒロインの苦悩が、現在では時代がかった陳腐なものに思えるのが残念。ここでも、主演女優の演技力のなさが、裏目に出てしまった。