★★★☆
「草原の歌」の楽しさ
「バネ男とSS」1946
「コントラバス物語」1949
「草原の歌」1949
「楽しいサーカス」1951
「フルヴィーネのサーカス」1955
「情熱」1961
まずおもしろいのが「草原の歌」。
ジョン・フォードの「駅馬車」のパロディで、駅馬車に積んだ金塊を狙う悪役退治の活劇が、人形アニメーションならではの誇張されたギャグとともに軽快に語られる。
どこかすっとぼけたヒーローのガンマンや、フリルだらけのエキセントリックな悪役の造形がおかしいし、ガンマンとヒロインが歌う、デタラメ英語による西部の歌、なんてものも飛び出して楽しい限りで、しかも全編が、遠い異国の少年の目から見た西部劇への尽きせぬ憧憬、とでもいうべき、せつなさに充ちている。
目のクリクリした、いかにもぬいぐるみの馬が大活躍をして、とてもかわいらしい。
脚本は、のちに「レモネード・ジョー 或いは、ホース・オペラ」(1964)を手がけることになるイジー・ブルデチュカなのだそうで、なんだか「チェコ怪奇骨董幻想箱
Vol.2 リプスキーBOX」まで買いたくなってくるではないですか。
次によかったのが、「楽しいサーカス」。
トルンカには珍しく、切り絵を使った短い平面アニメなのだけれど、ピカソの「青の時代」ふうの造形と色彩がとても美しいし、動作が終わるたびに、まるで魂が抜けたようにだらりと手足を垂らす切り絵人形の動きが、神秘的に感じられる。
にぎやかな人形アニメではなく、動きの制限された切り絵アニメでトルンカを見ると、黙々と密室での作業を続けたのであろうこの作家の、暗い情熱が感じられるような気がする。
他に、ナチス・ドイツを皮肉った、完成度の高いセルアニメ「バネ男とSS」。
チェーホフの短編を、地味だけれど詩情あふれる人形アニメに仕上げた「コントラバス物語」には、晩年の傑作「天使ガブリエルと鵞鳥夫人」(1964)を思わせる、ほのかなエロチシズムが漂っている。
「情熱」は、スピード狂の人生をコミカルに描いた、短い人形アニメ。
本ディスク中最長(23分)の表題作「フルヴィーネのサーカス」は、かなり子供向けの教訓話。デメキンのような主人公の造形が愉快なのだけれど、肝心のサーカスシーンが、「楽しいサーカス」ほどの充実感には至らない。