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アリス

監督: ヤン・シュヴァンクマイエル

1988年


★★★趣味的な「アリス」

スイス・西独・英国合作。
シュヴァンクマイエルの長編を観るのは初めて。

実写と人形アニメの融合なのだが、もちろんレイ・ハリーハウゼンみたいな安っぽさはなくて、きわめて芸術的な造形が徹底されているのだし、児童文学の映画化だからといって、ディズニー的な感情移入を強いることなどはなくて、アリスを含めたキャラクターたちは、妖精的な存在であることの証になる、幼児の残酷さと他人への無関心を忘れることがない。

全体の印象としては、ルイス・キャロル的というよりも、シュールレアリストやボルヘスの視線を通過した、カフカを思わせるアリスで、話の舞台も、複雑な構造の建物の中を右往左往するといった印象。
「物語」ではなく「夢の理論」を強調するのが、いかにもシュールレアリスト出身者で、人形アニメ特有のぎこちない動きが、「夢」そのものであるかのような、まがまがしい効果を上げている。

しかしこうして、あまりにポピュラーな物語の中に、シュヴァンクマイエルが造形した奇怪な人形やオブジェが置かれてみると、それら造形物の個性があまりに強すぎることもあって、どうやってもシュヴァンクマイエルふうの味つけをしたアリスという、趣味的な印象を免れない。原作の再創造というよりも、たんなる一風変わったアリスだという、「軽さ」を感じてしまう。
少し観たことがある、本作以前の過激な短編作品と比べると、出てくるキャラクターがキモチカワイイというたぐいの、オシャレ系の映像作家として消費されそうな感じがするのが、ちょっとものたりない。


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