[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

モニターの中の映画館

監督別>ブライアン・デ・パルマ>悪魔のシスター

悪魔のシスター
Sisters

監督: ブライアン・デ・パルマ Brian De Palma

1973年

製作: Edward R. Pressman
原案: Brian De Palma
脚本: Brian De Palma, Louisa Rose
撮影: Gregory Sandor
音楽: Bernard Herrmann
出演: Margot Kidder, Jennifer Salt, Charles Durning, Barnard Hughes, William Finley, Dolph Sweet


★★★★☆終わらない悪夢

十代の終わり頃にビデオで観て、最も心を奪われた映画の一つ。
一時はほんとうに好きで好きで、この映画のことばかり考えていた一時期があったのだが、30年近く経って本作を観直してみると、当時のひねくれた心が思い出されてウズウズする。まともに作れるものを、まともに作らないことに心血を注いだ、なんという痛々しく、みずみずしい映画なのだろうか。

かつてシャム双生児として、腰の部分でつながっていた姉妹、ダニエル(マーゴット・キダー)とドミニク。手術によって身体を切り離されてからは、ドミニクの精神の荒廃が進み、ついには姉と関係した男にナイフを振りかざして……。
……という、ホラーチックな表向きのストーリーを映画化するにあたって、デ・パルマはジャンル映画やヒッチコック的な表現への執着を隠そうとせず、あきらかな才能と情熱をもって中盤までのサスペンスを盛り上げるのだけれど、奇妙にも物語はしだいに整合性を放棄して、偏執狂めいた妄想世界を漂いながら、そのまま独善的なクライマックスを迎えてしまう。

すべてが解決したようで、実はほとんど解決にたどりつかない物語は、異様なテンションの高さを維持して宙ぶらりんにされたまま、じつに奇妙なラストショットを迎えてしまうわけで、これをジャンル映画だと信じ込んで観ていたら、あまりに無責任だとスクリーンに椅子を投げつけたくなるのかもしれない。
しかしおそらく本作は、もしデ・パルマがその後、「娯楽」映画ではなく、「芸術」映画の作り手になることを選んでいたら、ずっと高く評価されていたはずの、不幸な作品なのだと思う。

あの奇妙なラストショット――事件が幕を下ろしても、チャールズ・ダーニングがずっと窃視の欲望を維持し続ける不可解な情熱――には、才能のある若い監督が、自分の中にわだかまる歪んだ愛憎をジャンル映画というものにぶつけてみせた結果としての残酷な詩情が漂っていて、そこになにかの既視感を感じるとすれば、おそらくわれわれがデビッド・リンチの不条理ユーモアを経験済みだからに違いない。
そして「キャリー」(1976)以降の通例になった例の「二段オチ」というものは、欲望に満ちた世界を本当は終わらせたくないこの監督が、娯楽映画への妥協を示すために編みだした苦肉の様式だったのではないかと、気づくことになる。

この映画のことを思い出そうとすると、バーナード・ハーマンが書いた狂おしい旋律がすぐさま記憶のなかにリフレインされるばかりで、はたして自分が結末というものを見たのかどうか、いぶかしくさえ思えてくる。たぶんデ・パルマにとって映画というものは、目を背けられないほど魅力的な悪夢のようなものでなくてはならなかったのだろう。
そのまがまがしい魔力を直接的に伝え得た一点において、本作は「完璧」な出来映えを誇っている。


< 目次に戻る

Google