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愛のメモリー

監督: ブライアン・デ・パルマ

1976年


★★★嫌いになったつもりだが

デ・パルマは、嫌いな監督、というか、嫌いにならなければと決めつけている監督。
ギャグやからかいでもない限り、これ見よがしな姿勢というものは、醜いものである。特にデ・パルマの場合、カメラをグルグル回したり、長大なハイスピード撮影をしたりという「華麗なテクニック」を、節操なく発揮するために物語をこねくりまわすところが、だんだん嫌になってくる。
「ボディ・ダブル」で決定的に嫌いになり、「アンタッチャブル」ではバカかと思い、「カジュアリティーズ」で愛想を尽かして、それ以降は観ていないのだけれど、しかし70年代の作品(「悪魔のシスター」、「ファントム・オブ・パラダイス」、「キャリー」、本作、「フューリー」)には、どうしても抗いがたい魅力を感じて、本当は好きなのではないかと、ついもう一度確かめたくなってしまう。

本作はイタリアロケの雰囲気がとても素敵で、古い教会で壁画を修復しているヒロイン(ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド)の姿とか、彼女を追いかける主人公(クリフ・ロバートソン)が紛れ込む街角の風景とか、彼女が回廊で、ふとダンテを朗読するところ(ここの音楽は最高!)だとか、ミステリアスで、詩情たっぷりで、忘れがたい場面がいくつもある。
遺作になった「タクシードライバー」の直前に書かれた、バーナード・ハーマンのスコアも美しくて、ため息が出るのだし、デ・パルマ作品にはめずらしいハッピーエンドも印象的だ。

それでも好きになれないというのは、本作がヒッチコックの「めまい」という、死ぬほど好きな作品のあからさまなオマージュだからかもしれず、自分の好きなものを他人にこねくりまわされたという、一種の近親憎悪なのかもしれない。

[以下ネタバレ]
DVDには36分にもおよぶ、見応えのあるドキュメンタリー映像が収録されている。
それによると本来の脚本は、じつは主人公の娘だったヒロインが発狂して、その治療のために過去を再現するという、いかにも妄想狂らしいもので、バーナード・ハーマンのアドバイスによって、現在のプロットに落ち着いたのだという。
それでも出来上がった作品には、主人公と娘との近親相姦が含まれていて、それが配給会社の総スカンを食らい、結局はその場面が主人公の妄想だったという、穏当な形に編集し直したのだそうだ。

つまりあのハッピーエンドは、撮影された時点では、いかにもデ・パルマらしい後味の悪い結末だったわけで、確かに主人公とヒロインが寝ることで本作のプロットは強められるのだけれど、長回しの移動撮影やグルグル回しを見せるためなら、鬼畜なことも鬼畜だと意識しない、この監督の本性がうかがえる。
あの格調高い「めまい」と、自己顕示欲丸出しの本作を比べざるをえないことが、嫌でたまらない。

いや、B級映画らしい簡素なスタイルで撮られていたら、きっと好きな映画だったのかもしれない。でもあの身代金が投げられる堤防での長回しだけは、残しておきたい。それにヒロインが主人公の妻(=彼女の母親)の歩き方を夜道で真似してみせるところなんか、すばらしかった……とかなんとかいって、またまた観てしまうのかもね。


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