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アメリカの影

監督: ジョン・カサベテス

1959年


★★★★強烈な体験

いずれ観ようと決めている映画の内容がわかりそうな記事があると、すぐにページを閉じて、極力予備知識を仕入れないようにしているし、目に飛び込んでしまった情報もなるべく忘れるように心がけている。その努力が実って(というか、単にボケているだけなのだが)、カサベテスのインタビュー映画まで観たことがあるにもかかわらず、この映画がどんな映画なのかをすっかり忘れてしまって観た。これが初見。

カサベテスが主催していた俳優のワークショップでの即興劇を下敷きに、台本なしの即興的な演技をカメラに納め続け、現在目にすることのできるヴァージョンができあがるまでに3年間を要したという、痛々しいほどの苦労を重ねた処女作を、なんの身構えもなく観ながら、役者のなまなましすぎる演技に驚いたり、物語を拾い上げたりしているうちに、78分の映画は突然終わってしまった。
残ったのは、行きずりの他人の痛々しい人生の切り口を覗いてしまったという、取り返しのつかないような印象と、永遠に宙に浮いてしまった彼らの人生の行く末だ。

物語の主役格である三人兄妹のうち、影を一身に背負ったようなベン・カラザーズは、現在の/ある時期の観客自身であり、自分が過ごした時代の象徴でもあったと考えてしまうような、神話的な力を持っている。邦題でくっついた「アメリカの」が、余計に思えてくる。

チャールズ・ミンガスが、これも即興で音楽を担当したことはよく知られていて、その存在感は強烈だが、実際は当時ミンガス・グループにいたシャフィ・ハディ(サックス)のほうが活躍している。

それにしても、「サンダーバード」と「陰陽師」で儲けて、カサベテス作品をミドルプライスで提供する東北新社は偉い。


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