帰ってきた モニターの中の映画館

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チョコレート・ファイター
Chocolate

監督: プラッチャヤー・ピンゲーオ Prachya Pinkaew

2008年

  

脚本: Napalee (ネパリー), Chukiat Sakveerakul (チューキアット・サックウィーラクン)
アクション監督: Panna Rittikrai (パンナー・リットグライ)
撮影: Decha Srimantra (デーチャー・スィーマントラ)
音楽: Giant Ape (ジャイアントエイプ), Nimit Jitranon, Rochan Madicar, Korrakot Sittivash
出演: JeeJa Yanin [Yanin Vismitananda] ("ジージャ" ヤーニン・ウィサミタナン), 阿部寛, Pongpat Wachirabunjong (ポンパット・ワチラバンジョン), Taphon Phopwandee (タポン・ポップワンディー), Ammara Siripong (アマラー・シリポン), Dechawut Chuntakaro, Hiro Sano (ヒロ・サノ)


★★★☆驚愕の美少女障害者アクション

タイのヒットメーカー、プラッチャヤー・ピンゲーオの『マッハ!!!!!!!!』(2003)、『トム・ヤム・クン!』(2005)に次ぐ監督第三作。

知的障害を持った女の子が、ガンを患ったママのため、しつこくつきまとう昔のヒモからママを守るために闘うという話なんですけど、ヒロインはたんなる知的障害者ではなく、マーシャルアーツに特化したサヴァン症候群だという驚くべき設定の作品です。
ムエタイの選手の練習やらテレビやゲームの格闘技やらを見るとすぐにその技を身につけてしまうだけでなく、強い相手と闘うと、その場で相手の技を完コピしてしまう。
お花模様のTシャツとゆるパンツ姿で闘うヒロインのジージャーの強烈なアクションは目を疑ってしまうのだけれど、例によってスタントやワイヤーアクションなしの肉弾戦です。
いやあ、もう、かわいくてむごくてすごい。

ビルの三階、四階から、ジージャーにやられた悪人たちがポロポロ落っこちて、アスファルトに叩きつけられるまでをすべてワンショットで撮っているところとか、ジャッキー・チェンのマゾ・アクションを越えて、人体破壊ドキュメント映像に近い。
ジージャーはアクションシーンの撮影中に、目に蹴りが当たって瞼がはがれてしまったのだそうで、そういう重症人だらけの現場のドキュメント映像がエンドクレジットに収録されていて震撼します。

ジージャーの完璧な強さを冒頭近くから誇示しすぎているようで、もっと順々に強い相手と対戦して強くなっていったら、終盤に向けて盛り上がったんじゃないかなと思うのだけれど、この最強ヒロインを得て、早く彼女の神技を見せたいスタッフの辛抱たまらん気持ちも伝わってきて、それもまた好ましい気がする。
最強の敵として登場するのが、ジャージ姿の障害者格闘家だっていう持って行き方がまたすさまじいですね。

阿部寛がジージャーの父親の日本人やくざ役で、トンデモな悪役かと思いきや、悪のなかの良心を象徴するような重要な役だったのが意外。
阿部ちゃんの日本語ナレーションが入るのは、日本公開スペシャル・バージョンだけらしいのだけど、日本語ではじまってタイ語の物語になる国籍の混乱が、独特の味を出していてよかったと思います。

日本ロケシーンが絵葉書みたいな構図ばっかりで、かつてぼくが住んでいた北九州の風景が過剰に劇的に登場したのはちょっと失笑ポイントだったんですけど、ジージャーのファッションやら、彼女が闘う肉体が本格的に覚醒する場面でのアニメーションの挿入やら、オカマのスナイパー部隊やら、アクション以外のセンスもハリウッドや日本の映画を研究しまくっている印象があります。
タランティーノや三池崇史や石井克人はもちろん、もしかすると(ある意味とてもよく似ている)樫原辰郎監督の『PERSONA ペルソナ』(2008)まで参考にしているのかもしれない。

美少女アクション、なんて一言では片付けられない衝撃作でした。
気になるジージャーの次回作は "Du Suay Doo" (Stubborn, Beauty, wild) という作品らしい。


(2009/6/12 新宿ピカデリー 2009/6/12記)


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