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離魂
Split of The Spirit

監督: フレッド・タン 但漢章/ Fred Tan

1987年

制作: 羅維
脚本: 但漢章
撮影: 楊渭漢
音楽: 張弘毅
出演: 王小鳳, 徐淑媛, 呉少剛, 顧冠忠, 楊麗青, 麥大傑, 楊瑞孫, 楊元障, 陳立品


★★★☆意欲的な台湾ホラー

黒沢清、篠崎誠、遠山純生プレゼンツの紀伊國屋DVD。
シネマヴェーラ渋谷の「紀伊國屋書店レーベルを讃える」特集でも上映されていました。

プロデューサーの羅維は、ブルース・リー作品の監督として名高いけれど、この監督についてはまったく知らないので、以下は解説ブックレットの要約にしかなりません。監督のフレッド・タン(但漢章)は、台湾ニューウェイブを先導した世代の評論家なのだそうです。
インテリではあるが、ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンのようなスタイリッシュな作風に向かわず、ただ独り、ヨーロッパの監督に傾倒し、アメリカ映画の効率的な語りを重視しながら、キン・フーの助監督をしたり、リー・ハンシャン(あのすばらしい『真説チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』の監督)の影響を公言したりして、中国的な主題を扱いつつ、わずか三本の一般公開作を残して早逝した人だとのこと。

数少ない作品のなかでも、アメリカ映画的なスタイルとテクニックを駆使した唯一のホラーが本作なのだそうで……と気負って観てみると、あまりの通俗テイストにびっくりしました。
男に騙されて謀殺された女の魂が、人気女流ダンサーに憑依して、自分を殺した男たちを次々に殺していくのだけど、殺される男やダンサーの関係者には霊魂学会の権威がいて、仏教・道教・密教の法具を駆使しながら霊魂と対決する、という話。

霊界からの光がピカーッとか、ガラスで首チョンパとか、ワイヤーでフワリとか、炎がドビャーとか、ツイ・ハークを越えてるかもしれない臆面のない見せ場の連続で、毎度お楽しみの趣向を凝らした殺人を繰り返す霊に立ち向かうのは、除霊術を身につけた老博士と、ちょっと頼りなさそうな現代青年と、メガネっ娘の助手のおまけ付き。80年代お気楽娯楽ムードが、そこはかとなく漂っています。

かといってお馬鹿映画なのかと、つっこみどころを探しても、外国人がわからない台湾土着の習俗のなかにうやむやに消えてしまい、万国共通の映画の約束のなかでは、非常に手の込んだ整合性が追求されている。
考えれば考えるほど、憑依現象というものを堅牢なテクニックを使って描いた、隙のない映画だと気づいてしまいます。

大傑作、というほどでもないですが、過渡期の台湾映画界の特殊な状況でしかありえなかったのだろう、類い希なインテリジェンスが真っ向からくだらない題材に挑んだ不思議な味わいが、妙にあとを引く作品。不遇な監督のこういう珍品をサルベージしていただけてありがたいです。


処女作 『暗夜』 Dark Night

遺作 『怨女』 Rouge Of The North


(DVD鑑賞 2009/6/10記)


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