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長い長いトレーラー
The Long, Long Trailer

監督: ヴィンセント・ミネリ Vincente Minnelli

1954年

製作: Pandro S. Berman
原作: Clinton Twiss
脚本: Albert Hackett, Frances Goodrich
撮影: Robert Surtees
音楽: Adolph Deutsch
美術: Edward C. Carfagno, Cedric Gibbons
出演: Lucille Ball, Desi Arnaz, Marjorie Main, Keenan Wynn, Gladys Hurlbut, Moroni Olsen, Bert Freed, Madge Blake, Walter Baldwin, Oliver Blake, Perry Sheehan


★★★☆手堅い演出の企画もの

米盤(リージョン1)のDVDは、通常のトールケースの二分の一以下の厚みのスリムケースに入っていて、気が利いています。ほかのDVDも、分厚い冊子とか付録とかが付いていないんだったら、みんなこのケースになれば収納がラクになるのに。
英語字幕も表示できるので、辞書を引き引き、なんとかせりふを追えるのもありがたい。

テレビの「アイ・ラブ・ルーシー」の人気者、ルシル・ボールとデジー・アルナズ夫妻が、MGMと2本の映画製作の契約を結び、その1本をミネリが担当した、というもの。大ヒットしたのだそうです。
「アイ・ラブ・ルーシー」のあの人たち、っていうと、日本で言えば唄子啓介みたいなもんでしょ、くらいにしか知らなかったから、ぜんぜん期待はしていませんでした。

しかしこれ、かなりおもしろい。お世辞抜きで笑えます。
息の合ったコメディ・チームの、絶頂期の魅力っていうんでしょうか。ルシルとデジーの一挙一動に円熟した芸が感じられて、これでセリフのニュアンスまでわかったら、もっと笑えたんでしょう。
脚本は『花嫁の父』正・続や『踊る海賊』のアルバート・ハケットと、その妻で共作者のフランシス・グードリッヒ。彼らに「アイ・ラブ・ルーシー」の製作チームが助力したのだそうで、きっちりと作り込まれて、スターの芸と物語のバランスもよくとれています。
ミネリの演出も (撮りたくて撮った作品には必ず含まれている挑戦的な演出こそないものの) 手抜きなしの正攻法で、とるにたりないギャグにも品格を感じさせます。


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お話は単純。
トレーラーってのは、ご存じの通り、日本で言うキャンピング・カーのデカいやつですね。
そのトレーラーを集めて、モーテルを経営してるみたいな場所がアメリカにはあるようで、豪雨の夜に、そこに駆け込んできた一人の男が、デジー・アルナズ。
彼はモーテルのオーナーに息せき切って、いま表に停まっている大型トレーナーは、自分のものだと訴える。妻との新婚旅行の途中でケンカをして、妻とトレーナーが消えてしまったのだと……。

ここからはデジーの回想。
結婚を間近に控えたデジーとルシルは、ルシルの猛烈なプッシュの結果、トレーナーで全米をめぐる新婚旅行に出ることになった。彼女が選んだのは、豪華な "Long, Long Trailer"。
式を終えた彼らは、3トンの巨体に新婚の家財道具をギッシリ詰め込んだトレーラーを新車につなぎ、親戚友人たちの祝福を受けながら、ハネムーンに出発する。
しかし、むやみにバカでかいトレーラーを引っ張りながらの道中では、行く先々で問題が続出。デジーは自動車のブレーキと同時に、トレーラーのブレーキを引かなければならないことをつい忘れてしまうし、ルシルはナビゲーションを間違えてしまうし……。
ぬかるみにはまって斜めになったトレーラーのなかでの珍騒動や、トレーラー・キャンプ場での隣人たちの過剰なお節介に二人は気が休まるヒマがなく、おまけに途中で立ち寄ったルシルの実家では、トレーラーの車庫入れに失敗して、庭や家屋を破壊してしまう。
ルシルは旅の思い出にと、停車した先々で拾った岩(大人が両手でやっと抱えるくらいのでかいやつ)をコレクションし、大量のラズベリー・ジャムを買い込んでいる。おかげでただでさえ重いトレーラーは、いまや牽引するのがやっとの状態。
そんなとき、彼らの行く手に、8000フィート(2500メートル)を超える山岳地帯が立ちふさがる。トレーラーの運行は困難を極める山道で、重量オーバーはもってのほか。デジーはルシルに岩を捨てるように命じるが、彼女は思い出の岩たちを捨てるに捨てられず、こっそり戸棚やオーブンに隠してしまう。
予想をはるかに超える険しい、断崖すれすれの山道に、ハンドルを握るデジーも、秘密を隠したルシルも真っ青になって、あわや転落の危機を迎えながらも、ようやく山頂に。そこでトレーラーはパンクして、ルシルの岩が転がり出る。激怒したデジーは岩とジャムを投げ捨て、ルシルとトレーラーを残したまま、自動車で山を下りてしまう……。

再び冒頭のモーテル。
オーナーの奥さんと買い物に出ていたルシルが戻って、デジーと再会する。
お互いに意地を張って、とっさにふたりは相手をののしりあうのだが、モーテルの老夫婦が見守るなか、最後には雨の中で抱き合うのだった。

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――さてこの映画、表面的には明朗コメディだけど、じつはかなり悲惨なディザスター・ムービーだというのがおかしいんです。
マスコミがお勧めをして、みんながやってることなんだから、なんとかなるさ、と脳天気に信じて行動するアメリカンな二人のエゴイスティックな性格が、次々に手に負えない災害を引き起こしていく。その災害が、ファミリー向けドラマの枠から想像される規模を一歩超えているところで、スレスレの笑いを取っています。

恐怖の車庫入れ場面での笑いのタイミングや、家を壊された人々のリアクションは完璧だし、二人の思い出のために岩をコレクションするなんて、バカで可愛らしい女の行為が引き起こす山道の危機は、トラックでニトログリセリンを運ぶ『恐怖の報酬』さながらの恐ろしさです。

ミネリ作品としては、彼の職人技のたしかさと、リズム感のよいコメディセンスを再確認するに留まり、とにもかくにもルシル・ボールとデジー・アルナズ夫妻の映画なんですけど、一般的な親しみやすさとともに、エゴイスティックであること、アメリカ人であることを痛切に皮肉る毒を備えたこの二人の笑いには、いまの世にも通用する普遍性が感じられます。

(16 August, 2006 ©taraga)


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