★☆
退屈な上に長い
最初は深作欣二が単独で監督するはずの作品が、「「青春篇」を十分にやってくれ」という原作者(尾崎士郎)の息子の要望から話がまとまらなくなって佐藤純彌との二人体制になり、「どうせやるから飛車角の話もぶち込んでくれ」という東映の要望も生かすために、やくざ映画に手慣れた中島貞夫も起用され、三班同時に撮影されたものらしい(「映画監督
深作欣二」ワイズ出版刊)。
深作欣二が「瓢吉(永島敏行)とお袖(松坂慶子)のラブロマンス」、佐藤純彌が「瓢吉の故郷と早稲田大学騒動篇」、中島貞夫が「飛車角・おとよの部分」という分担を知らずに観たのだが、パートの分担方法も知らずに佐藤純彌と中島貞夫の演出部分を見分けるというのは難しすぎることだし、深作欣二が恋愛パートを撮ったというのは予想外だった。
ただし、永島敏行が女給をしている松坂慶子に逢いたくて、垣根の穴から旅館の庭に這い上がり、廊下を通りかかった松坂を呼び止める場面で、今夜はとても忙しいからと松坂が永島の肩をポンと突くと、コロリと転がった永島が入ってきた穴から転がり落ちていく場面は、深作演出に違いないと思った。
先春に観たばかりの内田吐夢の名作「人生劇場 飛車角と吉良常」と同じ場面が、ことごとく酷くなっているというのは、辛くてたまらないのだが、そのうえ青成瓢吉の永島敏行、学友の奥田英二(現・瑛二)、やくざの風間杜夫が、ミスキャストだというのは、どうにかならないかと思う。
伴映で観た「日本侠客伝 斬り込み」の健さんが、しばしば自分で決断を下しかね、周囲から推されてようやく意を固めるのを見ていると、謙譲の美徳という言葉を思い浮かべるのだが、最後まで煮え切らない青成瓢吉を、ただぼうっと演じている永島には、(あくまでも観客の総意を代弁してですよ)張り倒したい気持ちが起こってくる。
松坂慶子、中井貴恵、森下愛子の女優三人は、それしか見せ場がないかのように、ひたすら脱ぎまくる。
零落した松坂が、雑誌編集長の成田三樹夫に向かって啖呵を切る場面は、さすがの貫禄なのだけれど、そもそもゴージャス顔の松坂が、しがない女の役をやる時点でリアリティがないのだし、中井貴恵は地味で魅力が乏しいし、森下愛子はかわいらしいのだが、役のモデルになった才女・宇野千代だとは思えない。
中井貴恵が、飛車角の松方弘樹を愛するあまり、刺青フェチになって、つい刺青が立派な風間杜夫に体を任せてしまうくだりはおもしろいが、それも好意的に読みとらなければ読みとれない程度の演出である。
138分の長尺で、「人生劇場」の世界がよくわかる、というのが、最大の取り柄かもしれない。
見どころはやっぱり、瓢吉の父役の三船敏郎、飛車角の松方弘樹、吉良常の若山富三郎というベテラン陣の演技。
特に若山の、坊ちゃん坊ちゃんとヘコヘコする自虐的な吉良常がおもしろい。
しかし、若山がケンカ相手の腹にグチュグチュとドスをねじ込む場面は、きたならしかった。
それから松方は、中井貴恵の股間に手を入れたあとで、指を舐めそうにする演技がいやらしすぎです。
(2003/12/18 中野武蔵野ホール)